書簡 武部ツタ宛
本文約600字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
東京に暮らす著者が、大阪で生活する武部ツタに宛てた書簡を収める。離れて暮らす相手の体調を気遣うとともに、自身の近況や経済的な困窮、子どもの養育費にかかる費用、体調不良による仕事の停滞など、日常の悩みや家族への金銭的援助の様子を率直に綴る。また、今後の大阪訪問の可能性や、手紙による交流の継続を提案しながら、慣れない土地での生活を案じる言葉を交えて、個人的な信頼関係に基づく親密な心境を伝えている。
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宛先 大坂市西区松島十返町 武部種吉様方 発信地 東京市外巣鴨村宮仲二五八三
お手紙拝見。大坂に来てゐると云ふことはやつと半月ばかり前にききました。東京に来たのだつたら尋ねて来ればよかつたのに。本郷の菊富士ホテルと云ふことは今宿のうちでも代のうちでも知つてゐる筈、一寸きいてから来ればよかつた。うちからは四五日前たよりがあつた。突然に、盆前に金を送つてくれるやうにとの事だつたけれど、もう日数がないから、とりあえず手許にあつた拾円だけ送つて置きました。私も毎月でも送りたいと思ふが、流二を他所に預けて、その方に毎月十円近くとられるので、三十円や四十円とつた所でどうすることも出来ないのに、この二三ヶ月は体の具合がわるくて少しも仕事をしないで遊んでゐるので一層困ります。出来さえすればどうにでもするつもり。今宿へは今年一杯はかへれないと思ふ。来年になつたら早々にかへります。大阪には、もうよほどお馴れか、少しは知つた人が出来ましたか。私も時々はたよりをするから、そちらでも時々はハガキ位は書いて欲しい。こちらに用があつたら、面倒な事でなかつたら足してあげる。入用なものでもあつたら、とゝのへて送つてあげる。大阪では、国とも大分遠いから、体を大切にして病気になんかならぬやうになさい。私のことは心配しなくても大丈夫だから。そのうち大阪にでも行つたら会ひませう。大坂は特にあついから本当に体を大事におしなさい。
野枝 津た子どの
完