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TORENDIA

嘘言と云ふことに就いての追想

本文約10,400字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

高等小学校に通う少女は、嵐で帰宅できず宿泊したことを理由に教師から厳しく追及される。無実を訴える中で、大人たちが自らの保身や嫉妬のために平然と嘘をつく醜い姿を目の当たりにする。この原体験を通じ、少女は偽善的な大人社会に対する怒りと疑念を抱き、生涯忘れることのできない屈辱を経験する。本作は「嘘」という言葉を軸に、自身の幼少期の苦い記憶を綴り、大人たちの欺瞞とそれによって傷ついた子供の心について論じる。

伊藤野枝

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嘘言を吐くと云ふことは悪いことだと私達はずつと小さい時から教へられて来ました。これは恐らく一番いけないことに違ひはありません。けれど私たちが今迄過ごして来たいろ/\なことについてふり返つて考へて見ますとき、私は何れの場合に於ても私の真実は恐らく――それが複雑であればある程、また心理的に傾く程、――一つも受け入れては貰へなかつたにもかゝはらず、私の虚偽は深ければ深い程都合よく受けられました。それは本当に偽りのない、真実な心として。

私の単純な幼い心は、たゞ一途に年長者たちに受け入れられると云ふことですべては打ち消されて何の不安も罪悪も感じませんでした。けれども刻々に変化してゆく私の心はだん/\にそれ等のことに向つて目をみはつて来ました。私がぢつと自分の嘘を用ゐることについて見てゐて一番に見つけ出したことは、具体的な事柄について嘘を吐いたときにはそして、それが悪気のない一時のごまかしであればある程最も多くの叱責をうけました。しかしそれにしても、だん/\にずるくなつて来て嘘に技巧を用ゐるやうになれば大方はそれが現はれないですんで仕舞ひます。まして気持の上の偽はりとか何とかになりますと殆んど何の問題にもならず他人の目にもふれずにすんでしまひます。もしそれを強ひて正直に人に説明しやうとでもするが最後それは全く飛んでもない誤解をうけて思ひがけない結果をもたらします。

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