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TORENDIA

目羅博士の不思議な犯罪

本文約15,400字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

上野動物園の猿の檻の前で、不思議な青白い青年と出会った探偵小説家は、彼から「模倣」という本能に潜む恐怖について聞かされる。青年は、向かい合う二つのビルディングの窓と月光を利用した、恐るべき心理的トリックを語り始める。それは、人間が猿と同じように他人の行動を真似てしまう宿命を悪用し、目羅博士という人物を罠にはめていくという、妖しくも残酷な物語であった。青年は自身を人形使いに見立て、静かにこの奇妙な体験を語り終える。

江戸川乱歩

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一

私は探偵小説の筋を考える為に、方々をぶらつくことがあるが、東京を離れない場合は、大抵行先が極っている。浅草公園、花やしき、上野の博物館、同じく動物園、隅田川の乗合蒸汽、両国の国技館。(あの丸屋根が往年のパノラマ館を聯想させ、私をひきつける)今もその国技館の「お化け大会」という奴を見て帰った所だ。久しぶりで「八幡の藪不知」をくぐって、子供の時分の懐しい思出に耽ることが出来た。

ところで、お話は、やっぱりその、原稿の催促がきびしくて、家にいたたまらず、一週間ばかり東京市内をぶらついていた時、ある日、上野の動物園で、ふと妙な人物に出合ったことから始まるのだ。

もう夕方で、閉館時間が迫って来て、見物達は大抵帰ってしまい、館内はひっそり閑と静まり返っていた。

芝居や寄席なぞでもそうだが、最後の幕はろくろく見もしないで、下足場の混雑ばかり気にしている江戸っ子気質はどうも私の気風に合わぬ。

動物園でもその通りだ。東京の人は、なぜか帰りいそぎをする。まだ門が閉った訳でもないのに、場内はガランとして、人気もない有様だ。

私は猿の檻の前に、ぼんやり佇んで、つい今しがたまで雑沓していた、園内の異様な静けさを楽しんでいた。

猿共も、からかって呉れる対手がなくなった為か、ひっそりと、淋しそうにしている。

あたりが余りに静かだったので、暫くして、ふと、うしろに人の気配を感じた時には、何かしらゾッとした程だ。

それは髪を長く延ばした、青白い顔の青年で、折目のつかぬ服を着た、所謂「ルンペン」という感じの人物であったが、顔付の割には快活に、檻の中の猿にからかったりし始めた。

よく動物園に来るものと見えて、猿をからかうのが手に入ったものだ。餌を一つやるにも、思う存分芸当をやらせて、散々楽しんでから、やっと投げ与えるという風で、非常に面白いものだから、私はニヤニヤ笑いながら、いつまでもそれを見物していた。

「猿ってやつは、どうして、相手の真似をしたがるのでしょうね」

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