TRENDIA CLASSIC

星より來れる者

室生犀星

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「星より來れる者」序

このごろ詩はぽつりぽつりとしかできない。一時のやうに、さうたやすく書けなくなつたかはり、書くときはすらりと出てくる。それが詩の本統かもしれない。詩を書き出して十年になるが、やはり古くかいたことを時時かき換へてゐるにすぎない氣がする。併し一方からいへば、一つのものをかいても、本統に別な氣持でかいてゐることを考へると、形式でなく、輪廓でもない、心核から、しつかりと自分をかいてゐる氣もする。

さういふわけで、私は特に作らうとするより、考へようとするより、れいの、すらりと書いてゐる。それすら極めて稀にしかできないのだから、私として珍らしい詩集かもしれない。詩などといふものは、甚だしく轉換るものでなく、一とところに目ざめてゐる心は、やはり、むかしのやうに一とところに寂然として沈んでゐるわけのものである。それゆゑ、變化つたとか變化らないとかいふことは、眞實そのものでなく、たんに形式や輪廓、もしくは詩行の配列などから言はれることが多いのである。

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