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TORENDIA

母の手紙

本文約950字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

牢屋にいる息子幸助のもとへ、母親から手紙が届く。音信不通で不孝者と恨んだ過去を詫びつつ、貧しい人々のために労働組合で尽くす息子の志を汲み取る。炎天下の泥田で懸命に働く母親は、地主との格差を目の当たりにし、息子の正しさを確信して自らの苦労を顧みず息子を鼓舞する。過酷な環境に置かれた者同士の絆と、社会の矛盾に立ち向かう息子を誇り、遠く離れた場所から静かに念じ続ける母の心情を綴る。

中野鈴子

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🎧 母の手紙 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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幸助 けさ 手紙をうけとった やっぱり達者でいてくれたか わたしは思わず手紙をおしいただいただ もしやこの暑さでやられてでもいるのではないかと心配していたに 牢やの中はどんなに暑いじゃろうねい そここそ地獄じゃもの 夏は出来るだけ暑いように冬はなるべく 寒いように仕掛けてあるんじゃろうさかいね コンクリで囲うた窓一つない箱みたいな建て物じゃと言うでないか ようく 障りなくいてくれた

苦労ばかりかけてきたお母さんに またこのような心配させて申し訳もない 不孝者ととがめないでおくれ 今日の手紙にもこんなことを書いてあるが

幸助 それは初めのうちはそうと思っただ 五年前に年寄りの母親をひとりのこして ポーイと江戸さ行ったきり 金を送るでなし一本のたよりも呉れず そのあげくに牢やへたたき込まれたことがわかった時にゃ 不孝も不孝 牢やへたたきこまれると言うは 何ということだと思い うらんだり 泣いたりしただ 在所の者も白い眼で見るし 村さ はなれて他国へ夜逃げでもしようかと考えただ 本当にそう思っただ

お前はズッと東京でその 労働組合というところに いたんだか お前はその労働組合で 何千人何万人の働いても働いても貧乏している人のために 命も牢やも物ともしないで働いていたんだか そして命も牢やも物ともしないで働いている人がそんなにたくさんいるんかいの 大学校まで出た旦那衆の息子さんらや 大学校の先生までもいなさるんじゃってな、お前の言うことはよく分かっただ

いまは毎日、あの田の草取りだ 昼間の暑い陽ざかりにジリジリの 煮え湯の泥田を四つんばいになって這うて 歩くのじゃ 顔も手もぼんぼんにふくれ上がり 爪の先がずくずくうずくだ 六十ごけ婆がこのように もがいても喰う米も無いんだ その横で地主の奥様は夏羽織で お寺まいりなさるし、若旦那衆は 洋服で海へ行ったり ボール投げしているだ わたしはわかっただ

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