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TORENDIA

氷島の漁夫

本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

フランスの海港ロシュフォールに生まれた船乗り志向の青年ヤンは、海という不可思議な世界に強く惹きつけられる。本作は、北フランスの寂しい海岸に住む老祖母イヴォンヌや少女ゴオドらを見守る中、運命に導かれるように海上生活へ身を投じるヤンを描く。海という力に魅了され、陸上の恋を振り切り海へと戻る男性の姿と、それを受け入れ忍従する女性たちの対比を通し、セルト種族の心内に漂う哀愁や目に見えぬ力への従順を浮かび上がらせる作品である。

吉江喬松

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🎧 氷島の漁夫 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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Pierre Loti の本名は、Louis Marie Julien Viaud といつて、生れたのは、佛蘭西の西南サントンヂュ地方の有名な海港、ロシュフォールであつた。

彼には兄と妹とが一人づゝあつた。彼は第三番目で、末子であつた。隨分甘やかされて育てられたらしい。少年時から空想勝ちな兒で、學校の日課の準備をしてゐながら、遠い國々の事や、熱帶地方の光景なぞを胸に浮べて、恍りしてゐた。學校へ行くのもとかく怠け勝ちであつた。

彼の祖先等は船乘りであつた。彼の祖父はトラファルガアの海戰にも出てゐた。彼と海との關係は生前からの宿縁である。幼年時から海は恐れと不思議との感じを彼の心に充たしてゐた。暗碧の色をした果てしない水の廣野、四方から迫るが如く響きを寄せて來る夕方の海を初めて彼が眺めやつた時は、恐れと悲しみと、寂しさと、然かもなほ言ひ難い誘引とを身に感じたのであつた。

寂しさと悲しさと然かもなほ言ひ難き誘引とを起す大洋は、彼にとつては一種不可思議な世界であつた。セルトの種族の前へいつも誘引の魅力を見せる自然は、彼にも同じ力を及ぼさずにはゐなかつた。夢を追ふ心、不思議の國を追求する心、それが彼を驅つて洋上の人とならしめずには置かなかつた。

彼は佛蘭西の海軍へ身を入れて、廿九歳までには世界中を周航した。その時、彼は初めて處女作小説 “Azyad”(千八百七十九年)を公にした。それから「氷島の漁夫」の出づるまでには、左の諸作が引續いて公にせられた。

“Le Mariage de Loti.”  (千八百八十年)   “Le Roman d'un Spahi.”  (千八百八十一年)   “Fleurs d'Ennui.”  (千八百八十二年)   “Rarahu.”  (同年)   “Mon Frre Yves.”  (千八百八十三年)   “Les trois Dames de Kasbah.”  (千八百八十四年)   “Pcheurs d'Islande.”(氷島の漁夫) (千八百八十六年)

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