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TORENDIA

五月雨

本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

五月雨が降り続く中、屋根から溢れる水の音を聞きながら、著者は得体の知れない不安に襲われる。地球の深部が崩落するのではないか、あるいは地中から巨大な何かが家を突き倒すのではないかという恐怖に夜も眠れない日々を過ごす。雨が止み、晴れ間が戻った家で畳を剥がすと、床下には竹の根が蔓延り、芽が畳を突き破って室内へ侵入していた。家全体が突き上げられ、崩壊の危機を感じた著者は、その家を離れる決意をする。

吉江喬松

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🎧 五月雨 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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五月雨が音を立てゝ降りそゝいでゐた。

屋根から伝つて雨樋に落ち、雨樋から庭へ下る流れの喧しい音、庭の花壇も水に浸つてしまひ、門の下から牀下まで一つらに流れとなつて、地皮を洗つて何処へか運んで行く。

夜の闇の中で、雨も真黒い糸となつて落ちて来るやうに思はれる。泥がはね上り、濁水が渦巻いて流れ、空も暗く、何処を見ても果てがつかない。家の中に籠つて電灯の下で、ぢつとその音を聞いてゐても不安が襲つて来る。牀を敷いて蒲団の中へもぐり込んでも安眠が出来ない。

うと/\として宵から臥てゐたが、私は妙に不安な気がして眠れなかつた。大地の上を流れてゐる水が、何処か一ヶ所隙を求めて地中へ流れ込んで行つたらば、其処から地上の有りたけの水が滝のやうになつて注ぎ込んで行つたらば、人間の知らずにゐる間に、地球の中が膿んで崩れて不意に落ち込みはしないかといふやうな気がせられた。

と思ふと、また何者かその地中から頭を上げて、地上の動乱の時機に際して、地上を覆つてゐる人間の家屋を、片端から突き倒しでもしはしないか。何ものかの巨きな手が、今私の臥てゐる家の牀下へ伸ばされて、家を揺り動かしてゐるのではあるまいか。

夢のやうに現のやうに、私ははつと眼が醒めると、たしかに家のゆさ/\揺すぶられたのを感じた。耳を立てると、ごう/\いふ水の音が地中へ流れ込んでゐるやうに思はれた。地中の悶えと、地上の動乱とが、少しも私に安易を与へなかつた。

さういふ不安が幾晩もつゞいた。

五六日経つと五月雨が止んだ。重い雲が一重づゝ剥げた。雲切れの間から雨に洗はれた青空が見えて来た。日の光が地上に落ちた。地の肌からは湯気が立ち上る。ぐつたり垂れてゐた草の葉が勢好く頭を上げる。樹々の芽が伸びだした。

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