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TORENDIA

亜米利加の思出

本文約3,900字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

若い頃に滞在したアメリカでの経験を通じ、当時の社会情勢や現地の生活文化を綴る。都会と田舎の対比や、試験制度に見られる学生の気質、人々の質素な生活や風俗の美点などを回想する。また、異文化との接触における印鑑文化の相違や図書館の利用状況についても触れ、戦時下の日本における日本語の荒廃を憂い、文学者として祖国の言語と芸術を保護・訓練する重要性を論じる随筆。

永井荷風

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🎧 亜米利加の思出 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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皆様も御存じの通り私は若い時亜米利加に居たことはありますが、何しろ幾十年もむかしの事ですから、その時分の話をしてみたところで、今の世には何の用にもなりますまい。米国がいかほど自由民主の国だからと云ってその国に行って見れば義憤に堪えないことは随分ありました。社会の動勢は輿論によって決定される事になって居ますが、その輿論には婦人の意見も加っているのですから大抵平凡浅薄で我々には堪えられなかった事も少くはありませんでした。ストラウスの楽劇サロメが演奏間際になって突然米国風の輿論のために禁止となった事などはその一例でしょう。ラフカジオ、ハーン(小泉八雲)が黒人の女を愛したようなことから世に容れられなくなった事なども所謂米国風輿論の犠牲と見るべきものでしょう。露西亜のゴルキイが本国を亡命して紐育に行ったことがあるが矢張輿論のために長くその地に留まることができなかったような事がありました。しかし目下日本の情勢では亜米利加人の欠点を指摘することはできませんからそのいい方面を思出してお話をしましょう。

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