松の家
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あらすじ(AIが作成しました)
ネヴァダ山脈のタホ湖畔に暮らすチャーチ博士は、土地の松の木を一本も伐採せずに別荘を建てるという難題を息子に課す。建築学者の息子は、敷地内の巨大な砂糖松をそのまま大黒柱として利用し、夢殿を模した八角形の建物を設計する。屋根の中心を松の幹が貫く独特な構造を持ち、成長を続ける樹木と共生する風流な暮らしと、暴風雨時にも耐えうる巧みな建築的工夫の数々を、著者自身の訪問体験を通じて綴る随筆である。
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岩波さんの惜櫟莊に輪をかけた話が、アメリカにある。それは松の大木を助けるために、生きた松の木をそのまま大黒柱にして、家を造った話である。
ネヴァダ大學に永年勤めていて、四五年前に引退した、チャーチ博士という老教授がいる。以前に國際雪氷委員會の總裁をしていた人で、二十年越しの知り合いである。
昨年の夏、歸國の途次、この老先生を、リノの町に訪ねた。そしたら八十七歳のこの老先生が非常に喜んで、近くのタホ湖にある別莊へ行こうという。それで妻や娘たちも一しょに、この老先生を自動車に乘せ、ネヴァダ山脈の中腹にあるタホ湖まで出かけて行った。
タホ湖というのは、カリフォルニア州とネヴァダ州との境に位し、たしか五千フィートくらいの高さのところにある、美しい湖である。太平洋側では、屈指の避暑地で、輕井澤と十和田湖とを兼ねたようなところである。
湖をめぐって、松の大木が黒いような森をなしている。その森の中に、色とりどりの別莊が點在していて、まことに美しい土地である。松といっても、砂糖松(シュガー・パイン)という種類で、非常に大きくなり、幹は杉のように眞直である。ちょっと大きい木だと思うと、幹は二抱え以上あるのが普通である。松毬は長さ一尺以上もある。
ところで、三十年くらい前に、チャーチ先生、ここに土地を買って、別莊を建てようとしたのであるが、その時松の木は一本も伐ってはいけないと、岩波さんのようなことをいい出した。もっとも向うが、先口である。
チャーチ先生の息子は建築學者で、親爺からこういう命令を受けたが、松林の中で、松の木を一本も伐らないで、家を建てることは、普通にはできない。しかしそんなことをいってもきく親爺ではないので、けっきょく比較的孤立した松を、そのまま大黒柱にして、八角形の家を造ることにした。東洋美術にも趣味のある男で、夢殿の寫眞を見て、そっくりな家を建てた。もっとも屋根の中心から、大きい松の木がのび出ているところは、夢殿とはちがう。