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TORENDIA

塩の風趣

本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

京橋にあったK鮨で味わった英国産の塩の美しさと美味しさを端緒に、塩の成分や味覚の仕組みを考察する。また、調味料を多用せず素材を活かす英国料理における塩の重要性や、北陸や東北の農漁村で親しまれる「しょっつる」の風趣に触れながら、調理における塩の良否がもたらす意味を綴る。塩の品質に対する関心は趣味ではなく、食物を大切に思う心や生活に根ざした切実な問題であることを論じる。

中谷宇吉郎

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🎧 塩の風趣 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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戦争前の話であるが、京橋のあたりに、K鮨という鮨屋があった。材料がよいというので、たいへん評判がよかった。

亡くなった岩波さんは、人に御馳走をするのが道楽であって、よく方々へ連れていって、御馳走をしてくれたものである。K鮨もその一つであった。北海道から出てくると、東京の御馳走は、どれもこれもうまいし、それに味覚のそう発達していない私には、こういう御馳走は、少しもったいないくらいであった。しかし御馳走になるのは悪いものではなく、それに先方が御馳走をするのが道楽の場合には、両者の利害が完全に一致するので、よく方々へ案内してもらったものである。

K鮨は、評判どおりに非常に鮮しい材料を使うので、たいへんうまかった。料理台の上にのっていた、一尺立方くらいの鮪の切身の色の美しさなど、今でも記憶にのこっているくらいである。値段はもちろん相当なものらしかったが、魚の種類によっては、産地または漁船まで、特別に使を出して買いこんでいるということで、少しくらい高くても、むりもない話であった。

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