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TORENDIA

本州横断 癇癪徒歩旅行

本文約22,700字 ・ 読了時間 約46分

あらすじ(AIが作成しました)

夏を愛する冒険心に溢れた著者が、画伯や技師らと共に本州横断徒歩旅行を敢行する様を描く。出発前夜の不可解な血の落下という不吉な予兆や、記録的な豪雨による洪水の中での移動といった困難に見舞われつつも、一行は常陸から那須野ヶ原を目指す。過酷な登山競走や道中の騒動を乗り越え、太陽の恵みを享受しつつ心身を鍛える冒険の旅を通じて、現代人の軟弱さを批判し、強靭な精神を鼓舞する記録である。

押川春浪

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不思議の血=懦弱と欲張=髯将軍の一喝=技手の惨死=狡猾船頭=盆踊り見物=弱い剛力=登山競走=天狗の面=天幕の火事=廃殿の一夜=山頂の地震=剛力の逃亡=焼酎の祟=一里の徒競走=とんだ宿屋

(一)昼寝罵倒

この奮励努力すべき世の中で、ゴロゴロ昼寝などする馬鹿があるかッ! 暑い暑いと凹垂れるごときは意気地無しの骨頂じゃ。夏が暑くなければそれこそ大変! 米も出来ず、果実も実らず、万事尽く生色を失う事となる。夏の暑いのがそれほど嫌な奴は、勝手に海中へでも飛込んで死ぬがよい。今や狭い地球上――ことにこの狭い日本では、碌でもない人間が殖え過ぎて甚だ困っている。怠惰者や意気地無しがドシドシ死んでしまえば、穀潰しの減るだけでも国家の為に幸福かも知れぬ。

吾党は大いに夏を愛する。暑ければ暑い程鋭気に満ちて来る。やれやれ、何か面白い事をやってくれようと、そこで企てたのが本州横断徒歩旅行! もちろん亜弗利加内地旅行だの、両極探検だのに比すれば、まるで猫の額を蚤がマゴついているようなものであるが、それでも、口をアングリ開けて昼寝をしているよりは、千倍も万倍も愉快に相違ない。

出発は八月十日、同行は差当り五人、蛮カラ画伯小杉未醒子、髯の早大応援将軍吉岡信敬子、日曜画報写真技師木川専介子、本紙記者井沢衣水子、それに病気揚句の吾輩である。吾輩は腹式呼吸と実験から得た心身強健法とで、漸く病気の全快したばかりのところへ、要務が山積しているので、実は徒歩発足地の水戸まで一行を見送り、そこで御免を蒙る積りであったが、さて水戸まで行ってみると、オイソレと逃げる訳にも参らず、とうとう牛に曳かれて八溝山の天険を踰え、九尾の狐の化けた那須野ヶ原まで、テクテクお伴をする事に相成った。

(二)奇異の血汐

徒歩出発地は前にいう太平洋沿岸方面の常州水戸で、到着地は日本海沿岸の越後国直江津の予定。足跡は常陸、磐城、上野、下野、信濃、越後の六ヶ国に亘り、行程約百五十里、旅行日数二週間内外、なるべく人跡絶えたる深山を踏破して、地理歴史以外に、変った事を見聞し、変った旅行をしてみようというのである。

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