南極の怪事
本文約16,200字 ・ 読了時間 約33分
あらすじ(AIが作成しました)
ポルトガルのモンテス博士は、海岸で拾った古い空き瓶から、旅行家ラゴンが綴った驚くべき手記を発見する。ラゴンはかつて南太平洋で海賊に襲われた際、数千年前に行方不明となった古代文明の瑠璃岸国が遺した巨大船に遭遇した経緯を記していた。南極の極寒の中でミイラ化した乗組員と共に残されたその巨船は、現代の学者が追い求める未解明の秘密を抱え、遥か地球の果てに静かに眠り続けている。
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一
この怪異なる物語をなすにつき、読者諸君にあらかじめ記憶してもらわねばならぬ二つの事がある。その一は近頃ヨーロッパのある学者仲間で、地球の果に何か秘密でも見出さんとするごとく、幾度の失敗にも懲りず、しきりに南極探検船を出しておる事。その二は、いわゆる歴史の黒幕に蔽われたる太古、ぼうとして知るべからざる時代に、今は蛮地と云わるるアフリカ州の西岸、東に限りなき大沙漠を見渡すチュス付近に、古代の文明を集めたる一王国があって、その名は瑠璃岸国と口碑に伝えられているが、この国の最も盛んなりし頃、一人の好奇なる国王あり、何か物に感じたことでもあったものと見え、あるとき国中の材木を集めて驚くべき巨船を造り、船内の構造をすべて宮殿のごとく華麗にし、それに古代のあらゆる珍宝貨財と、百人の勇士と百人の美人とを乗せ、世界の諸国を経めぐらんとその国の港を出帆した。しかるにその船が南太平洋の波濤にもまれているうち、大暴風にでも遭ったものか、それとも海賊に襲われたものか、まったく行方不明になって、南太平洋の波濤は黙して語らず。
「どこにどうなってしまったか」という疑問が、数千年過ぎた今なお残っているという事。この二つの事――すなわち現時ヨーロッパのある学者仲間が、しきりに南極探検船を出しておる事と、古代文明国の一巨船が、永久の疑問を残して行方不明になった事とは、表面の観察では何等の関係もないようだ、イヤこうあらためて書けば、なんだか関係のあるように思う人があろうが、考えてみたまえ、数千年以前の物は、石の柱でも今は全く壊れてしまったほどだ、いわんや木で造った巨船においておやだ、好奇な学者先生いかに探しまわっても、いまさらそのような物の見つかる道理はあるまい。
しかしこの世のなかには理外の理がある、次の物語を読んだ諸君は、さてもこの世のなかには、そのような秘密――そのような不思議なことがあるかと、眼をまるくして驚くだろう。
二