TORENDIA
国民性と文学
綱島梁川
TORENDIA
国民性と文学
本文約6,500字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
文学に対し国民性の描写を求める当時の風潮を論じる。作家は日本国民である以上、意識せずとも作品の気脈には国民性が反映されるため、漫然と国民性を描けと要求することは無意義であると指摘する。また、国民の美質のみを描くことが国民的性情の満足につながるという主張に対し、醜処や短処もまた国民性の一部であると反論する。著者は、国民性という曖昧な語で作家の主観性や教訓主義を縛るのではなく、より具体的な文学的要請をすべきだと説く。
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今日の文学、就中小説に対する世間の要求の主なるものを挙ぐれば、現社会に密接して時事時潮を描けるといふもの其の一にして、国民性を描写して国民的性情の満足を与へよといふもの其の二なり。前者は姑く措く、後者の要求に対しては吾人頗る惑ふ。則ち問うて曰はく、国民性とは何ぞや、国民的性情の満足とは何ぞや、そも/\又此の要求に是認せらるべき点ありとせば、そは果して如何程の意味にて是認せらるべきかと。
漫然国民性を描けといふ、而も其の意義其の根拠を繹ね来たれば頗る漠たるものあり。之れを解して、
一、国民性の一部の影を描けとの義とすべきか、
二、国民性の全部の影を描けとの義とすべきか、
三、国民の美処もしくは美なる特質を描けとの義とすべきか、
所謂国民性を描けとの要求にして以上の三解の外に出でずとせば、是等は果して如何なる意義を有するぞ。吾人をして少しく之れを覈する所あらしめよ。
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