悟浄歎異
本文約12,400字 ・ 読了時間 約25分
あらすじ(AIが作成しました)
旅の途中で悟空の変身の術の練習に付き合う八戒と沙悟浄。精神を統一し、己を消して対象になりきる術を説く悟空に対し、八戒は苦戦する。圧倒的な才気と内なる火を宿し、世界に意味を与え続ける悟空の姿を沙悟浄は畏敬の念を持って見つめる。一方で、師父である三蔵法師の穏やかな寝顔から、永遠の眼差しと慈悲を感じ取った沙悟浄は、悟空からその強さを学ぶべく、自らの内面の変化を見つめ直そうと試みる。
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昼餉ののち、師父が道ばたの松の樹の下でしばらく憩うておられる間、悟空は八戒を近くの原っぱに連出して、変身の術の練習をさせていた。
「やってみろ!」と悟空が言う。「竜になりたいとほんとうに思うんだ。いいか。ほんとうにだぜ。この上なしの、突きつめた気持で、そう思うんだ。ほかの雑念はみんな棄ててだよ。いいか。本気にだぜ。この上なしの・とことんの・本気にだぜ。」
「よし!」と八戒は眼を閉じ、印を結んだ。八戒の姿が消え、五尺ばかりの青大将が現われた。そばで見ていた俺は思わず吹出してしまった。
「ばか! 青大将にしかなれないのか!」と悟空が叱った。青大将が消えて八戒が現われた。「だめだよ、俺は。まったくどうしてかな?」と八戒は面目なげに鼻を鳴らした。
「だめだめ。てんで気持が凝らないんじゃないか、お前は。もう一度やってみろ。いいか。真剣に、かけ値なしの真剣になって、竜になりたい竜になりたいと思うんだ。竜になりたいという気持だけになって、お前というものが消えてしまえばいいんだ。」
よし、もう一度と八戒は印を結ぶ。今度は前と違って奇怪なものが現われた。錦蛇には違いないが、小さな前肢が生えていて、大蜥蜴のようでもある。しかし、腹部は八戒自身に似てブヨブヨ膨れており、短い前肢で二、三歩匍うと、なんとも言えない無恰好さであった。俺はまたゲラゲラ笑えてきた。
「もういい。もういい。止めろ!」と悟空が怒鳴る。頭を掻き掻き八戒が現われる。