鍵から抜け出した女
本文約21,000字 ・ 読了時間 約43分
あらすじ(AIが作成しました)
黄風島の精神病院に監禁された北川準一は、密かに所有していた鍵を唯一の慰めとして日々を過ごす。ある日、脱走を強行して尼寺へ逃げ込んだ準一は、そこで小田春代と名乗る女性に出会う。春代は、準一の父の遺産と政府の重要書類を狙う森虎造の陰謀を追う警察官であった。彼女は準一の持っていた鍵を手掛かりに森の罪を暴き、二人は事件の解決を通じて結ばれる。本作は、監禁からの脱出劇と陰謀の真相究明を描く。
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黄風島にて
今夜こそ、かねて計画していたとおり、僕はこの恐ろしい精神病院を脱走しようと決心した。――
そもそも僕は、どうしてこの島の精神病院などに入れられるようなことになったのか、その訳を知らなかった。第一僕は、こんな島なんかに来たくなかったのだ。母親のお鳥に連れられ、内地をおさらばしてこの北国の黄風島に移住してきたのだが、なぜ母親があの気持のいい内地を去るような気持になったのか腑に落ちない。まさか母親お鳥は、僕をこの精神病院に入れるために、わざわざ内地を捨てて黄風島に来たわけでもあるまいと思うが……。
とにかくこれは夢ではないのだ。僕はいまたしかに精神病院の一室に監禁せられているのだ。入口の扉はこっちからはどうしても開かなかったし、また窓という窓には厳重な鉄格子が嵌っていた。そしてこの不潔な小室には、少年が二人まで同室しているのだった。
母親お鳥が今まで一度も僕をこんなところに入れると云ったことがない。母親と二人でこの島へ着いたときは、かねて内地で親しくしていた森虎造というおじさんが迎えに出てくれた。森おじさんは僕たちに向い、さぞお前たちは土地不案内で困るだろうし、また島にいま適当な家も空いていないことだから、とりあえず自分の邸にくるがいい。室を二つ三つ明けてあげるから当分それへ入っていて、ゆるゆる空家を探すのがいいだろうと親切に云ってくれた。それで僕たちは、島の斜面に建っている豪勢な洋館へ案内され、そこで三室ほど貸しあたえられた。なんでも森おじさんは、内地にいた頃とは違って、たいへん成功し、この島の中では飛ぶ鳥落とす勢力があり、何でもおじさんの思うとおりになるそうだ。