本文へ移動
TORENDIA

暗号数字

本文約18,400字 ・ 読了時間 約37分

あらすじ(AIが作成しました)

探偵の帆村荘六は、内務省の役人を名乗る木村という人物からの依頼を受け、四日間にわたり各地を奔走させられる。しかし、これは帆村を事務所から遠ざけ、彼の持つ短波通信機を不正利用するための罠であった。偽の依頼により大辻助手を失うという大失態を演じた帆村は、巧妙に仕組まれた暗号と諜者たちの組織的な計画により、自身の慢心を突かれ、取り返しのつかない深い苦杯を嘗めることとなる。

海野十三

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 23

帆村探偵現る

ちかごろ例の青年探偵帆村荘六の活躍をあまり耳にしないので、先生一体どうしたのかと不審に思っていたところ、某方面からの依頼で、面倒な事件に忙しい身の上だったと知れた。最近にいたって、彼はずっと自分の事務所にいるようである。某方面の仕事も一段落ついたので、それで休養かたがた当分某方面の仕事を休ませてもらうことに話がついたといっていた。

僕は、実はきのう、久しぶりで或るところで帆村荘六に会った。

彼は例の長身を地味な背広に包んで、なんだか急に年齢がふけたように見えた。顔色もたいへん黒く焦げて、例の胃弱らしい青さがどこかへ行ってしまった。色眼鏡を捨てて縁の太い眼鏡にかえ、どこから見てもじじむさくなった。そのことを僕が揶揄うと、彼は例の大きな口をぎゅっと曲げてにやりと笑い、

「ふふふふ、ちかごろはこれでなくちゃいけないんだ。街へ出ても田舎へ行っても、どこにでも行きあうようなオッサンに見えなくちゃ、御用がつとまらないんだよ。そういう連中の中に交って、こっちの身分をさとられずに眼を光らせていなくちゃならないんだからね。昔のように自分の趣味から割りだしたおしゃれの服装をしていたんじゃ、魚がみな逃げてしまう」

と、俗っぽい服装の弁を一くさりやった。

そこで僕は、彼がちかごろ取扱った探偵事件のなかで、特に面白いやつを話して聞かせろとねだったのであるが、帆村はあっさり僕の要求を一蹴した。

「諜報事件に面白いのがあるがね、しかし僕がどんな風にしてそれを曝いたかなんてことを公表しようものなら、これから捕えようとしている大切な魚がみな逃げてしまうよ」

と、彼は同じことをくりかえし云った。

そのような事件におどる魚は、そんなにはしっこいものであるのか。そういう問にたいして帆村荘六は、

海野十三の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本