ある宇宙塵の秘密
本文約5,300字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
教授に昇格した宇留木は、亡き恩師・渋谷博士がかつて秘密裏にロケットで火星探検へ旅立った夜を回想する。博士は宇宙で万有引力の均衡を破るため自らロケットを離れ、消息を絶った。全世界がその模様をテレビジョンで中継する中、火星到達直前で通信は途絶する。宇留木は恩師の行方を捜し、火星人の存在を確認するために、さらなる高性能テレビジョン機の開発に執念を燃やす。これは宇宙の彼方へ消えた恩師を追う弟子の探求を描く。
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その夜、テレビジョン研究室の鍵をかけて外に出たのが、もう十二時近かった。裏門にいたる砂利道の上を、ザクザクと寒そうな音をたてて歩きながら、私はおもわず胴震いをした。
(今夜は一つ早く帰って、祝い酒でもやりたまえ。なにしろ教授になったんじゃないか。これで亡くなられた渋谷先生の霊も、もって瞑すべしだ。……)
と、昼間同僚たちがそういってくれた言葉が思い出された。祝い酒はともかくも、早く帰ったほうがよかったようなきがする。どうもさっきから、背中がゾクゾク寒いうえに、なんだか知らぬが、心が重い。暗闇のなかから、恐ろしい魔物がイキナリ飛びだしてきそうな気がして妙に不安でならない。運動不足から起きる狭心症の前徴ではないだろうか。いや、これはやっぱり、今日の教授昇格が自分の心を苦しめるのだ。渋谷先生が三年前に亡くなられて、テレビジョン講座に空席が出来たればこそ、自分のような若い者が教授になれたのである。それが変に心苦しいのであろう。
それというのも、恩師渋谷博士が当り前の亡くなりかたをされたのであったら、そうも思わないのだけれど、博士の最後ほど奇々怪々なるものはなかったのである。じつに博士は、一塊の宇宙塵として天空にその姿を消されたのであった。地球が生れて八十億年、その間にどのくらいおびただしい人間が生れたか数えられないほど多いが、宇宙塵に化した人間はただひとり、渋谷博士が数えられるだけである。
「やあ、いまお帰りでありますか」
不意に声をかけたのは、裏門を守る宿直の守衛だった。私は黙礼をして、門をくぐった。
「そうだ、先生が地球を飛びだされたのも、こんな寒い夜ふけだった……」
私はその当時のことを、まざまざと思いださずにはおられない。
渋谷博士は当時、優秀な航空テレビジョン機の発明を完成されていた。当時二組の機械が作られたが、入念に実験されたうえで、
(きみ、素晴らしい性能だ。これならば十億キロぐらい離れても受影ができるよ)