なにか読者諸君が吃驚するような新しいラジオの話をしろと仰有るのですか? そいつは弱ったな、此の頃はトント素晴らしい受信機の発明もないのでネ。そうそう近着の外国雑誌にストロボダインという新受信機が大分おおげさに吹聴してあったようですね。しかし私は余り感心しないのですよ。結局ビート受信方式の一変形に過ぎないじゃありませんか。
ヤアどうも、君に議論を吹っかけるつもりじゃ毛頭なかったのですがネ、つい面白い原稿だねのない言訳に一寸議論の端が飛び出して来たという次第なのですよ。――
ホウ、君はそこの床の間にポツンと載っている変な置物に目をつけておいでのようですな。そうです、君の仰有るとおり、それは加減蓄電器の壊れたものなのですよ。半分ばかり溶けてしまって、アルミニュームが流れ出したまま固っているでしょう。これは何かって言うんですか?
いや実はネ、それについて一つ、取っておきの因縁ばなしがあるんですがネ、今日は思い切って、そいつを御話してしまうことに致しましょうか。
だが始めから断って置きますが、此の話はこれから私の言う通り全く同じに発表して貰っては私が困るのですがね。というのも実はこの物語の主人公であり、又同時に尊い実験者であるところの私の亡友Y――が亡くなる少し前に、是非私に判断して呉れという前提のもとに秘密に語った彼自身の驚くべき実験談なのでして、内容が内容だから、他へは決して洩らさぬことを誓わされたものなのです。不幸なる亡友Y――は、永らくおのれが胸だけに秘めていた解き得ぬ謎の解決を求めんがために折角私という話相手を選んだのでしたが、流石の私にも彼が満足するような明答を与えることが出来ませんでした。それでY――は一層がっかりして謎を謎として抱いたまま、地下に眠ってしまったのです。そして其の時にY――が私に残して行った不気味な遺品が、この壊れたバリコンでして、勿論彼の話の中に出て来る一つの証拠物とも言うべきものなのです。