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TORENDIA

省線電車の射撃手

本文約22,300字 ・ 読了時間 約45分

あらすじ(AIが作成しました)

省線電車内で起きた殺人事件を軸に、探偵小説家や技術者らが捜査に加わり物語が展開する。被害者の少女の近辺で怪しい動きを見せる人物たちが浮上する中、警視庁の大江山警部と探偵の帆村荘六は、弾丸の軌道計算や巧妙なトリックを解き明かそうと試みる。執念深い犯人が隠した証拠や、病院に運ばれた被害者を狙う動きを追うことで、事件の裏側に潜む人物の姿が浮かび上がり、緊迫した捜査の行方が描かれる。

海野十三

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帝都二百万の市民の心臓を、一瞬にして掴んでしまったという評判のある、この「射撃手」事件が、突如として新聞の三面記事の王座にのぼった其の日のこと、東京××新聞の若手記者風間八十児君が、此の事件に関係ありと唯今目をつけている五人の人物を歴訪して巧みに取ってきたメッセージを、その懐中手帳から鳥渡失敬して並べてみる。

*   *   *

「僕は、探偵小説家の戸浪三四郎である。かねがね僕は、原稿紙上の探偵事件ばかりを扱っているのに慊らず、なにか手頃の事実探偵事件にぶつかってみたいものだと考えていたところ、こんど偶然の機会をつかみ、この『射撃手』事件の捜査のお仲間入りができるようになったのである。……だが僕は、仕事が忙しいうえに、至って面倒くさがり屋だから、事件が起っても、いつも直ぐに駆けつけて犯罪の現場調べをやるというような勤勉な真似ばかりは出来ない。事件に関する僕の知識は大江山捜査課長の報告に基いているものも少くない」(東京郊外、大崎町の同氏邸にて)

「わたくしは[#「わたくしは」は底本では「わたしくは」]JOAK放送局技術部の笹木光吉です。このたびは飛んだことから事件に関係を持つようになりました。と申しますのは、わたくしの[#「わたくしの」は底本では「わたしくの」]邸宅が、事件の犯罪現場に近いところにあって、そのうえ可なり広い面積を占めているところから、犯人が邸内のどこかを、うろついているんじゃないかとの御疑いから、警視庁のお呼出しを、しばしば蒙るようになったのだそうです。なったのだそうです、とは妙な申し様でございますが、これは大江山捜査課長殿のお話なのですが、わたくしはそれについて半信半疑でいます。それと申しますのが、わたくしが科学者であるというのを口実にして、わたくしには関係のない事柄にまで科学的意見を徴されたことが、随分と多うございますのです」(上目黒の笹木邸内新宅に於て)

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