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TORENDIA

夜泣き鉄骨

本文約15,100字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

真夜中の工場で巨大な鉄骨クレーンがひとりでに動き出し、軋むような音を立てるという怪奇な噂が広まる。この不可解な現象を解明するため、組長は職工たちを率いて夜の工場へ潜入する。暗闇の中で突如動き出すクレーンを目撃した一行は恐怖に震えるが、この背後には誰かが電気仕掛けを利用して意図的に引き起こした巧妙な仕掛けと、凄惨な復讐劇が隠されていた。本作は、工場の夜に響く怪音の正体と、関係者の過去をめぐる物語を描く。

海野十三

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真夜中に、第九工場の大鉄骨が、キーッと声を立てて泣く――

という噂が、チラリと、わしの耳に、入った。

「そんな、莫迦な話が、あるもんか!」

わしは、検査ハンマーを振る手を停めて、カラカラと笑った。

「そう笑いなさるけどナ、組長さん」その噂を持ってきた職工は、慄えた眼を、わしの方に向けて云った。「昨夜のことなんだよ、それは……。火の番の、常爺が、両方の耳で、たしかに、そいつを聴いたよッて、蒼い顔をして、此のおいらに話したんだ。満更、偽りを云っているんだたァ、思えねぇ」

いつの間にか、わし達の周りには、大勢の職工が、集ってきた。

「組長さん、それァ本当なんだ」別の声が叫んだ。

「なんだとォ――」おれは、その声のする方を見た。「てめえは、雲的だな。雲的ともあろうものが、軽卒なことを喋って、後で笑れンな」

「大丈夫ですよ――」雲的は大いに自信ありげに、言葉をかえした。「それについちゃ、ちィっとばかり、手前の恥も、曝けださにゃならねえが、もう五日ほど前のことでさァ。徹夜勝負のそれが、十二時を過ぎたばかりに、スッカラカンでヨ、場に貸してやろうてえ親切者もなしサ、やむなく、工場の宿直、たあさんのところへ、真夜中というのに、無心に来たというわけ。さ、その無心を叶えて貰っての帰りさ、通り懸ったのが今話しの第九工場の横手。だしぬけに、キーイッという軋るような物音を聴いた。(オヤ、何処だろう)と、あっしは立停った。暫くは、何にも音がしねえ。(空耳かな?)と思って、歩きだそうとすると、そこへ、キーイッとな、又聞えたじゃねえか。物音のする場所は、たしかに判った。第九工場の内部からだッ。(何の音だろう? 夜業をやってんのかな)そう思ったのであっしは、顔をあげて、硝子の貼ってある工場の高窓を見上げたんだが、内部は真暗と見えて、なんの光もうつらない。(こりゃ、変だ!)俄に背筋が、ゾクゾクと寒くなってきた。そこへ又その怪しい物音が……。恐いとなると、尚聴きたい。重い鉄扉に耳朶をおっつけて、あっしァ、たしかに聴いた。キーイッ、カンカンカン、硬い金属が、軋み合い、噛み合うような、鋭い悲鳴だった」

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