権三と助十
本文約32,500字 ・ 読了時間 約66分
あらすじ(AIが作成しました)
享保時代の江戸、神田橋本町の裏長屋で暮らす駕籠かきの権三と助十は、小間物屋の彦兵衞が犯人として捕らえられた事件の真相を知っていた。二人は家主の六郎兵衞と相談し、勇気を出して大岡越前守へ証言を行う。奉行による隠し目附の働きで、左官の勘太郎の罪が明らかとなり、冤罪で牢にいたはずの彦兵衞も無事に帰還する。大岡の名裁きにより、町の人々が安堵と喜びに包まれる様子を描く。
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登場人物
駕籠かき 權三
權三の女房 おかん
駕籠かき 助十
助十の弟 助八
家主 六郎兵衞
小間物屋 彦兵衞
彦兵衞のせがれ 彦三郎
左官屋 勘太郎
猿まはし 與助
願人坊主 雲哲
おなじく 願哲
石子伴作
ほかに長屋の男 女 娘 子供 捕方
駕籠舁など
第一幕
享保時代。大岡越前守が江戸の町奉行たりし頃。七月初旬の午後。
神田橋本町の裏長屋。壁一重を境にして、上のかたには駕籠かき權三、下の方は駕籠かき助十が住んでゐる。いづれも破れ障子のあばら屋にて、權三の家の臺所は奧にあり。助十の家の臺所は下のかたにある。權三の家の土間には一挺の辻駕籠が置いてある。二軒の下のかたに柳が一本立つてゐて、その奧に路地の入口があると知るべし。
(けふは長屋の井戸がへにて、相長屋の願人坊主、雲哲、願哲の二人も手傳ひに出てゐる體にて、いづれも權三の家の縁に腰をかけて汗をふいてゐる。助十の弟助八は廿歳前後のわか者、刺青のある男にて片肌をぬぎ、鉢卷、尻からげの跣足にて澁團扇を持つて立つてゐる。權三の女房おかん、河岸の女郎あがりにて廿六七歳、これも手拭にて頭をつゝみ、襷がけにて浴衣の褄をからげ、三人に茶を出してゐる。少しく離れて、猿まはし與助は手拭を頸にまき、浴衣の上に猿を背負ひ、おなじく尻からげの跣足にてぼんやりと立つてゐる。表には角兵衞獅子の太鼓の音きこゆ。)