西湖主
本文約7,200字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
燕の書生・陳弼教は、洞庭で遭難し漂流中に迷い込んだ異境で、西湖の王の公主が暮らす宮殿に忍び込む。そこで公主の落とした巾に詩を書き加え咎められるが、偶然にも顔見知りの助けを得て窮地を脱する。その後、彼は持ち帰った宝によって巨万の富を築き、豪奢な生活を送るようになる。十年後、旧友の梁子俊は、洞庭で美しい女たちを従えて舟に乗り、不思議な富貴を極めた陳と遭遇する。帰郷した梁が事の真偽を確かめると、当の陳は家におり、自身の分身のような存在が湖上にいた事実は謎のまま、彼の生涯は不思議な伝説として語り継がれる。
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陳弼教は幼な名を明允といっていた。燕の人であった。家が貧乏であったから、副将軍賈綰の秘書になっていた。ある時賈に従って洞庭に舟がかりをしていると、たまたま大きな猪婆龍が水の上に浮いた。賈はそれを見て弓で射た。矢はその背に中った。他に小さな魚がいて龍のしっ尾を銜んで逃げなかった。そこで龍とその魚を獲って、じょうをおろして帆柱の間に置いてあったが、二つとも微かに息があった。そして龍は吻を開けたり閉じたりしてたすけを求めているようであった。陳は気の毒になって賈に請うて逃がしてやることにしたが、金創の薬を持っていたから、じょうだん半分にそれをつけて、水の中へ放してやった。龍と魚は長い間浮いていてそして沈んで往った。
後一年あまりして陳は北へ帰ったが、また洞庭を通ったところで、大風が吹いて乗っている舟が覆ってしまった。陳は幸いにして竹の箱があったので、それにすがって一晩中流れていて、木にかかって止った。そこで岸へ這いあがっていると一つの尸が流れてきた。それは自分の伴れていた従僕の少年の屍であった。陳は力を出して引きあげたが、もう死んでいた。
陳は疲労と悲しみで生きた心地もしなかった。彼は従僕の屍を前にして吐息していた。そこには樹木の茂った小山があり、小さな柳の枝が風のたびに緑の色をうごかすばかりであった。人通りがないので途を聞くこともできなかった。夜の明け方から辰の刻すぎまで坐っていたところで、不意に従僕の体が動きだした。陳は喜んでそれを撫でた。間もなく従僕はたくさん水を吐いて、夢の醒めたように蘇生した。そこで二人は濡れていた着物を脱いで石の上に乾したが、午近くなってやっと燥いた。二人はやがてそれを着たが、昨日から何も喫っていないので、腹がごろごろ鳴ってひもじくてこらえられなかった。