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TORENDIA

疑問と空想

本文約3,100字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

ほととぎすの鳴き声が飛行中の反響測深に関係しているのではないかという仮説や、九官鳥が人間の言葉を模倣する際の音響学的解釈など、自然界の現象に対する物理学的・生理学的視点からの考察を綴る。鳥の鳴き声や言語認識を、観念的な解釈に留まらせず、実験や統計的分析によって科学的に検証し得る対象として捉え、客観的な観測の重要性を説く随筆である。

寺田寅彦

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🎧 疑問と空想 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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一 ほととぎすの鳴き声

信州沓掛駅近くの星野温泉に七月中旬から下旬へかけて滞在していた間に毎日うるさいほどほととぎすの声を聞いた。ほぼ同じ時刻にほぼ同じ方面からほぼ同じ方向に向けて飛びながら鳴くことがしばしばあるような気がした。

その鳴き声は自分の経験した場合ではいわゆる「テッペンカケタカ」を三度くらい繰り返すが通例であった。多くの場合に、飛び出してからまもなく繰り返し鳴いてそれきりあとは鳴かないらしく見える。時には三声のうちの終わりの一つまた二つを「テッペンカケタ」で止めて最後の「カ」を略することがあり、それからまた単に「カケタカ、カケタカ」と二度だけ繰り返すこともある。

夜鳴く場合と、昼間深い霧の中に飛びながら鳴く場合とは、しばしば経験したが、昼間快晴の場合はあまり多くは経験しなかったようである。

飛びながら鳴く鳥はほかにもいろいろあるが、しかしほととぎすなどは最も著しいものであろう。この鳴き声がいったい何事を意味するかが疑問である。郭公の場合には明らかに雌を呼ぶためだと解釈されているようであるが、ほととぎすの場合でもはたして同様であるか、どうかは疑わしい。前者は静止して鳴くらしいのに後者は多くの場合には飛びながら鳴くので、鳴き終わったころにはもう別の場所に飛んで行っている勘定である。雌が鳴き声をたよりにして、近寄るにははなはだ不便である。

この鳴き声の意味をいろいろ考えていたときにふと思い浮かんだ一つの可能性は、この鳥がこの特異な啼音を立てて、そうしてその音波が地面や山腹から反射して来る反響を利用して、いわゆる「反響測深法」(echo-sounding)を行なっているのではないかということである。

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