本文へ移動
TORENDIA

津田青楓君の画と南画の芸術的価値

本文約11,500字 ・ 読了時間 約23分

あらすじ(AIが作成しました)

科学者である著者が、友人である津田青楓の日本画・南画を紹介する論考。既存の技巧主義を廃し、新たな眼で自然を捉えようとする津田の制作態度を、科学者の自然観と共通するものとして評価する。既存の慣習にとらわれず、自身の内から生じた独自の表現を追求する津田の作品を、後期印象派の画家やドストエフスキーの文学との類似性に触れつつ、その芸術的価値と将来への期待を綴る。

寺田寅彦

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 16

私は永い前から科学と芸術、あるいはむしろ科学者と芸術家との素質や仕事や方法に相互共通な点の多い事に深い興味を感じている。それで嗜好趣味という事は別として、科学者として芸術を論じるという事もそれほど不倫な事とは思われない。のみならず自身に取っては芸術上の問題を思索する事によって自分の専門の事柄に対して新しい見解や暗示を得る事も少なくないのである。それと同時に、科学者の芸術論が専門の芸術評論家の眼から見て如何に平凡幼稚なものであっても、芸術家の芸術論と多少でも異なるところがあらば、それは少なくも或る芸術家のために何らかの参考にならぬとも限らない。もしそうだとすれば自分がここにあえてこの一篇を公にするのも強ち無意味ではないかもしれない。例えば山出しの批評も時には三越意匠部の人の参考になるかもしれず、生蕃人の東京観も取りようでは深刻な文明批評とも聞える事があるかもしれない。

この稿を起したもう一つの理由は、友人としての津田君の隠れた芸術をいくぶんでも世間に紹介したいという私の動機からである。これも一応最初に断っておいた方がよいかと思う。

寺田寅彦の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本