TRENDIA CLASSIC

反逆

矢田津世子

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「天にまします我らの父よ。願わくば御名の崇められんことを。御国の来らんことを。御意の天のごとく地にも行われんことを。我らの日用の糧を今日もあたえ給え、我らに負債あるものを我らの免したるごとく、我らの負債をも免し給え。我らを嘗試に遇せず、悪より救い出し給え……アーメン」

朝の祈りが、厳かに厳かに会堂を流れた。

罪に喘ぐ小羊達は、跪き、うなだれた頭を指で支えて、聖なる聖なる父の御名を疲労れる迄くり返した。

「聖歌 二十四番!」

会師が厳然と命令した。

信者達は慌てて頁をくり始めた。太い、細い声が、てんでんばらばらに弾けた。調子の外れた胴間声が、きわ立ってみんなに後れて焦った。跛なコーラスの終った後で、信者の中から几帖面な顔付きの男が立ち上って祭壇に近づき、会師の傍にある大型の聖典を開いて早口に創世紀の或る一箇所を読んだ。

「……宣えり……宣えり……」

男は吃って、「宣えり」を何遍もくり返じ、赤面してますます慌てて吃った。

再びコーラスが始って、終ると、前から性急に咳払いをして喉を慣らしていた牧師がおもむろに腰を上げて祭壇に登った。彼の纏っている白い僧衣は、背景の黒い幕と崇高な対照をして、顎迄ある高いカラーや古風な爪先きだけを包む靴と共に、一層彼を威厳づけ、神に近いものにしていた。

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