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TORENDIA

超人間X号

本文約88,200字 ・ 読了時間 約177分

あらすじ(AIが作成しました)

三角岳に研究所を構える谷博士は、人造生物に魂を吹き込むため、雷の超高圧電力を利用する実験を繰り返す。ある日、人造生物「超人X号」が覚醒する可能性が高まり、周囲に緊張が走る。研究所への潜入捜査や警部の魂が少女に移り変わる謎が絡み合う中、科学の限界を追求した博士の壮大な実験の行方と、その末に生み出された人造生物との対峙を描く。

海野十三

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大雷雲

ねずみ色の雲が、ついに動きだした。

すごいうなり声をあげて、つめたい風が、吹きつけてきた。

ぐんぐんひろがる雲。

万年雪をいただいた連山の峰をめがけて、どどどッとおしよせてくる。

ぴかり。

黒雲の中、雷光が走る。青い竜がのたうちまわっているようだ。

雷雲はのびて、今や、最高峰の三角岳を、一のみにしそうだ。

おりしも雷鳴がおこって、天地もくずれるほどのひびきが、山々を、谷々をゆりうごかす。三角岳の頂上に建っている谷博士の研究所の塔の上に、ぴかぴかと火柱が立った。

つづいて、ごうごうと大雷鳴が、この山岳地帯の空気をひきさく。

黒雲はついに、全連峰をのみ、大烈風は万年雪をひらひらと吹きとばし、山ばなから岩石をもぎとった。

このとき、谷博士は、研究所の塔の下部にある広い実験室のまん中に、仁王立ちになって、気がおかしくなったように叫んでいる。

「雷よ、もっと落ちよ。もっと鳴れ。稲妻よ。もっとはげしく光れ。この塔を、電撃でうちこわしてもいいぞ。もっとはげしく、もっと強く、この塔に落ちかかれ」

博士は、腕をふり、怒号し、塔を見あげ、それから目を転じて、自分の前においてある大きなガラスの箱の中を見すえる。

その大きなガラスの箱は、すごく大きな絶縁碍子の台の上にのっている。箱の中には、やはりガラスでできた架台があって、その上に、やはりガラスの大皿がのっている。そしてその大皿の中には、ひとつかみの、ぶよぶよした灰色の塊がのっている。どこか人間の脳髄に似ている。海綿を灰色に染め、そしてもっとぶよぶよしたようにも見える。なんともいえない気味のわるい塊である。

しかもその灰色のぶよぶよした塊は、周期的に、ふくれたり、縮んだりしているのであった。まるでそれ自身が、一つの生物であって、しずかに呼吸をしているように見えた。

いったいその気味のわるい塊は、何者であったろうか。

ガラスの箱のまん中に、その気味のわるい塊があり、その塊を左右からはさむようにして、大きな銀の盤のようなものが直立して、この塊を包囲していた。その銀盤は、よく見ると、内がわの曲面いっぱいに、たくさんの光った針が生えていた。

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