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TORENDIA

放浪の宿

本文約13,900字 ・ 読了時間 約28分

あらすじ(AIが作成しました)

七月の激しい陽射しが照りつける街に、奉天から歩いてたどり着いた一人の若者が現れる。彼は空腹を抱え、飢えや困窮に苦しむ人々が集う正念寺の無料宿泊所を訪れる。そこには同様に流浪し、零落した男たちが身を寄せ合って暮らしていた。過酷な環境下、社会から疎外された者たちが互いの窮状を分かち合う中、宿泊所を追い出そうとする住職との対立や、街で発生した凄惨な強盗殺人事件が、彼らの運命を翻弄していく姿を描く。

里村欣三

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午さがりの太陽が、油のきれたフライパンのように、風の死んだ街を焙りつけていた。プラタナスの街路樹が、その広い掌のような葉身をぐったり萎めて、土埃りと、太陽の強い照りに弱り抜いて見えた。

街上には、動く影もなかった。アスファルトの路面をはげしく照りつけている陽脚に、かすかな埃りが舞いあがっているばかりで、地上はまるで汗腺の涸渇した土工の肌のように、暑熱の苦悶に喘いでいるのだ!

この太陽のじりじり焼きつける執念深さから、僅かな木影や土塀の陰を盗み出して、そこにもここにも裸形の苦力が死んだように、ぶっ倒れていた。そして寝苦しく身悶えする肌に、食い散らされた西瓜や真桑瓜の種子が、おかまいなくこびりついた。

日幕を深くおろした商店は、まるで唖のように静まり返えって、あの業々しい、支那街に特有な毒々しい調子で響いている筈の算盤や銅貨の音さえも、珍らしく聞えて来なかった。幕の隙間からは、涎をたらして、だらしのない姿態で眠むりこけている店員たちの姿が見えた。蠅ばかりが、閑散な店の土間を一杯に、わんわんとかすかな唸りをたてて飛び廻っているだけだった。……

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