ある日、どこからか、きれいな鳥が飛んできて、木にとまりました。腹のあたりは黄色く、頭が紅く、長い尾がありました。野鳥のように、すばしこくなく、人間になれているらしく見えるのは、たぶん飼われていたのが、かごを逃げ出したのかもしれません。
みんなが、大騒ぎをしました。大人も、子供も、どうしたら捕らえられようかと、木の近くへ集まりました。正吉は、胸がどきどきして、自分が捕らえようと、心にきめると、みんなにむかって、
「あの鳥は、おれのものだ。わあわあいっちゃいけない。」といって、彼は、すぐ鳥のとまっているかきの木に登りはじめました。
鳥は、そんなことにまったく気づかず、さものんきそうに、あちこちと景色をながめていました。見ている人たちの中には、うまくつかまればいいがと思ったり、あるいは、早く逃げればいいのにと思ったり、てんでになにか考えていたであろうが、とにかくだまって、正吉のすることを見まもっていたのです。
正吉は、木の幹の蔭で、なるたけ自分のからだを隠すようにして、音をたてずに、ねこがねずみをねらうときのようすそっくりで、すこしずつ鳥にしのびよって、もう一息というところまで達しました。そこで考えていた彼は、おそるおそる手をさしのべたのでした。
「うまくいったぞ!」と、見ている人の中から、いったものもあります。
しかし、あまり鳥が美しいので、つかまえる手がにぶったか、指先が、尾にふれんとした瞬間、急に鳥は、おどろいて飛び立ちました。そのとき、正吉のからだも、いっしょに木からはなれて、空でもんどり打ち、地上へと落ちました。
「鳥には羽があるが、人間にはないものを、なんで、手づかみができるものか。」と、こんどは、見ていた人々は、口々にののしりながら、気を失った子供のところへ駆けつけました。そして、だき起こして介抱するやら、親たちを呼びにいくやら、あわてふためいたのであります。