本文へ移動
TORENDIA

巌の花

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

宮本顕治が著した四冊の文芸評論集、『レーニン主義文学闘争への道』、『文芸評論』、『敗北の文学』、『人民の文学』を論じる。小市民的インテリゲンツィアからボルシェビキへと成長する著者の二十年近い思想の発展と、戦前の日本におけるプロレタリア文学運動の歴史的変遷を辿る。初期の情緒的な探求から、階級文化の理論的支柱を築くための情熱的な論策への変容を指摘し、日本の民主主義文学構築に向けた批評の意義を明らかにしている。

宮本百合子

速度
🎧 巌の花 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 3

宮本顕治には、これまで四冊の文芸評論集がある。『レーニン主義文学闘争への道』(一九三三年)『文芸評論』(一九三七年)『敗北の文学』(一九四六年)『人民の文学』(一九四七年)。治安維持法と戦争との長い年月の間はじめの二冊の文芸評論集は発禁になっていた。著者が十二年間の獄中生活から解放されてから、『敗北の文学』『人民の文学』が出版された。著者が序文でいっているように「敗北の文学」は一九二九年に二十三歳でかかれたものであり、『レーニン主義文学闘争への道』に収められていた。『人民の文学』はそのころから一九三三年著者が検挙されるまでのわずか五年間ほどの間に書いた評論と、十二年とんで、一九四六年以降に書いた三編が入っている。

いまこの四冊の評論集をながめて、書評を書こうとし、非常に困難を感じる。なぜなら、この四冊の本には、著者の二十年近い生活とその発展のひだがたたまれている。しかもそれは一人の前進的な人間の小市民的インテリゲンツィアからボルシェビキへの成長の過程であり、日本のプロレタリア解放運動とその文学運動の歴史のひとこまでもある。そのひとこまには濃厚に、日本の天皇制権力の野蛮さとそれとの抗争のかげがさしている。『人民の文学』は、ひろく読まれているのに、詳細な書評が少ないのは、この複雑性によるとも考えられる。

宮本顕治の文芸評論をながめわたすと、いくつかの点に心をひかれる。その一つは、著者が若々しい第一作「敗北の文学」及び「過渡期の道標」で示したニュアンスにとみ曲折におどろかない豊潤な資質は、その後の諸論集のなかでどのように展開されただろうかという問題である。

片上伸研究が「過渡期の道標」と題されたことは、示唆的である。著者は、芥川龍之介の敗北の究明とともに、小市民的土壌を自身の生活に否定し、「過渡期の道標」では一歩前進した。「イデェオロギーが情緒感覚の生活にまで泌みわたって、これを支配し変革する」ことがなければプロレタリア文学は真の芸術であり得ないという片上伸の主張とそのためのたたかいを著者は、同情と批判をもって跡づけている。

宮本百合子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本