TRENDIA CLASSIC

二、〇〇〇年戦争

海野十三

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発端

そのころ、広い太青洋を挟んで、二つの国が向きあっていた。

太青洋の西岸には、アカグマ国のイネ州が東北から西南にかけて、千百キロに余る長い海岸線を持ち、またその太青洋の東岸には、キンギン国が、これまた二千キロに近い海岸線をもっていた。

キンギン国は、そこが本国であったが、アカグマ国のイネ州は、本国とはかなり距たっていた。早くいえば、イネ州というのは、かつてイネ帝国といっていたものが、アカグマ国のために占拠せられて、イネ州と改められたものであった。

太青洋は、二大国に挟まれ、今やしずかなる浪をうかべて、平和な夢をむさぼっているように見える。そのころ、西暦は、ついに二、〇〇〇年となった。

果して太青洋は、いつまでも、平和のうちに置かれているだろうか。そのころ、高度の物質文明は、人類をほとんど発狂点に近いまでに増長させていた。

祝勝日

桜の花は、もう散りつくした。

それに代って、樹々の梢に、うつくしい若葉が萌え出で、高き香を放ちはじめた。陽の光が若葉を透して、あざやかな緑色の中空をつくる。

イネ州は、いまや初夏をむかえんとしている。

紺碧の空に、真赤なアカグマ国の旗がひるがえっている鉄筋コンクリート建の、背はそう高くないけれど、思い思いの形をしたビルディングが、倉庫の中に、いろいろな形の函を置き並べたように、立ち並んでいる。一般に、その形は、四角か、或は円筒を転がして半分地中に埋めたような恰好であった。そしてどの屋上にも、アカグマ国の国旗は、ひらひらとはためいていた。

遠くで、楽の音がきこえる。

その楽の音をききつけて、建物の間を、ぞろぞろと、うすぎたない身なりをした男女の群衆が通っていく。

「あっちだ、あっちだ。なにが始まったんだろうな、あの音楽は……」

「お前、ぼけちゃいけないね。じゃあ、こっちから聞くが、なぜお前はきょうこうしてぬけぬけと遊んでいられるんだい」

「そんなことを聞いて、おれを験そうというのだな」

と、その男は、歯をむいたが、

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