TRENDIA CLASSIC

大使館の始末機関

海野十三

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ずいぶんいい気持で、兵器発明王の金博士は、豆戦車の中に睡った。

睡眠剤の覚め際は、縁側から足をすとんと踏み外すが如く、極めてすとん的なるものであって、金博士は鼾を途中でぴたりと停めたかと思うと、もう次の瞬間には、

「さて、この大使館では朝飯にどんな御馳走を出しよるかな」

と、寝言ではない独り言をいった。

博士が、年齢の割にかくしゃくたる原因は、一つは博士の旺盛なる食慾にあるといっていい。

目の前に押釦が並んでいた。

押釦というものは便利なもので、それを指で押すだけで、大概の用は足りてしまう。以前、博士のところへ、新兵器の技術を盗みに来た某国のスパイは、博士のところにあった押釦ばかり百種も集めて、どろんを極めたそうである。

閑話休題、博士が、その押釦の一つを押すと、豆戦車の蓋がぽっかり明いた。博士はその穴から首を出して左右を見廻した。

「やあやあ、この豆戦車を明けようと思って、ずいぶん騒いだらしいぞ」

この豆戦車は、某国大使館の一室に、えんこしているのであった。部屋の寝台は、片隅に押しつけられ、床には棒をさし込んで、ぐいぐい引張ったらしい痕もあり、スパンナーやネジ廻しや、アセチレン瓦斯の焼切道具などが散らばっていた。

「この大使館にも、余計な御せっかいをやる奴が居ると見える。これだから、旅に出ると、一刻も気が許せないて」

そういいながらも、博士は別に愕いた様子でもなく、豆戦車からのっそりと外に出た。それからまた、もう一度豆戦車の中をのぞきこむようにして、押釦の一つをぷつんと押した。すると、がちゃがちゃと金属の擦れ合う賑かな音がしたかと思うと、その豆戦車はばらばらになり、やがてそのこまごました部分品や鋼鉄がひとりでに集ってきて、三つのトランクと変ってしまった。重宝な機械もあったものである。

博士は、そのトランクを、部屋の隅に重ねて積み上げた。

それから、もみ手をしながら、扉を開けて、階下へ下りていった。

博士はずんずん食堂へ入っていった。

「おい、飯を喰わしてくれんか」

食堂の衝立の蔭から、瞳の青い、体の大きい給仕がとびだしてきたが、博士を見ると、直立不動の姿勢をとって、

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