TRENDIA CLASSIC

時限爆弾奇譚

海野十三

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なにを感づいたものか、世界の宝といわれる、例の科学発明王金博士が、このほど上海の新聞に、とんでもない人騒がせの広告を出したものである。

その広告文をここへ抄録してみよう。

全世界人ヘノ警告文

余スナワチ金博士は[#「金博士は」はママ]、今度ヒソカニ感ズルトコロアリテ、永年ニ亘ル秘密ノ一部ヲ告白スルト共ニ、之ニサシサワリアル向ニ対シ警告ヲ発スル次第ナリ。抑々今回ノ告白対象ハ、余ガ数十年以前ニ研究ニ着手シ、一先ズ完成ヲミタル「長期性時限爆弾」ニ関スルモノニシテ、左記ニ列挙シアル十二個ノ物件ハ、イズレモ来ル十二月二十六日ヲ以テ、満十五年ノ時限満期ニ達スル爆弾ヲ装填シアルモノニシテ、右期日以後ハ何時爆発スルヤモ計ラレズ、甚ダ危険ニ付、心当リノ者ハ注意セラルルヨウ此段為念警告ス。

とあって、その次行に「記」としるし、それから博士のいわゆる「十五年満期」の「長期性時限爆弾」を「装填シアル物件」が十二個ずらずらと列記してあるのであった。

このところまでの警告前文を、金博士め何をいいだしたやらと、半ば好奇的に睡気ざまし的に、机の上に足などをあげていて、この記事を読んできた連中は、その次の行へいって、大概呀っ! と大きく叫んで、その躯は椅子ごと床の上に転がったものである。

この一見ばかばかしき騒ぎは、新聞読者の余りにも周章てん坊たるを証明するわけでもあるが、しかし左記の十二項を読んでいくと、まあそのくらい騒ぐのも無理ならぬことのようにも考えられる。すなわち、まず第一号を読んでみると、

一、八角形ノ文字盤ヲ有シ、其ノ下二振子函アル柱時計ニシテ、文字盤の[#「文字盤の」はママ]裏ニ赤キ「チョーク」ニテ3036ノ数字ヲ記シアルモノ。

とある。

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