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チャーチルが、その特使の出発に際して念を押していった。
「ええかね。なるたけ凄いやつを買取るんじゃ。世界一のやつでなけりゃいかんぞ」
そしてそっぽを向いて(これからは、何でも世界一主義で行って一釜起すんだ)と呟いた。
ルーズベルトが、その特使の出発に際して竹法螺声で命をふくめた。
「あの手におえないダブル・ヴイの三号に、博士を附けて買ってしまえ。第一手段に失敗したら第二手段、第二手段に失敗したら第三手段……。第十手段まで行くうちには、必ず成功するように検算はしてあるからねえ」
二人のいうことも、この節では前とは大分違って来た。
そこで特使と特使が、中国大陸の○○でぱったり行き逢ったわけだが、初めのうちはどっちもそれと気がつかない。それというのがチャーチルの特使は、不潔なモルフィネ中毒患者を装って、よろよろ歩いていたし、一方ルーズベルトの特使の方は、男使と女使の二人組で街頭一品料理は如何でございと屋台を引張って触れて歩いていたのである。
チャーチルの特使チーア卿は機甲中佐であった。ルーズベルトの女特使ルス嬢は、この間まで南太平洋の輸送機隊長をしていた航空大佐であり、その相棒たる男特使ベラントはリード商会の若番頭の一人で、ちゃきちゃきの手腕を謳われている人物だった。
「よう。料理は何が出来るのかね」
チーア卿は、ろれつの廻らない舌で、ベラントとルス嬢の屋台に呼びかけた。
「お好みの料理を作りますぜ。殊に燻製料理にかけては、世界一でさあ」
ベラントはぬかりなく宣伝にかかる。
「世界一かね。じゃあ、それを作って貰おうか。早いところ頼むぜ。それからウィスキーにミルクだ。コーヒーはジャワのを。シェリー酒も出してくれ。いや心配するな、金はもっているぜ」
チーア卿は、ポケットから、何枚かの法幣をつかみだして、皺をのばす。
「へいへい。有難うございます。おっしゃったものは皆そろって居ります」
「へえ、皆そろって居るって、本当かね」
「嘘じゃありません。まあ、ごゆっくり召上って頂きましょう」
うすきたない屋台から、途方もない絶品佳肴がとりだされたのには、チーア卿も目をぱちくりであった。