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TORENDIA

空気男

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

清家博士は、身体を透明にする青い器械を発明し、家で振る舞う妻から逃れようとする。しかし、雨に打たれて効果が切れたところを見つかり、寝室に閉じ込められる。脱出のために消身剤を服用するが、誤って妻も同時に摂取してしまう。瓦斯体となった二人は、強風に煽られ街へ吹き飛ばされる。空中で身体を切り刻まれた博士は、街中に散り散りとなり、落雷のたびに元の姿に戻るという不可解なバラバラ事件を引き起こすことになる。

海野十三

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🎧 空気男 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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青い器械

「これでいい。もう今日から、わが家の門を堂々とくぐれるんだ」

清家博士は、大きな鞄を重そうにさげ、いつもとは違い意気揚々と玄関へ入ってきた。

「誰? 御用聞きなら裏口へお廻り」

と、奥から例によって家附娘のマス子夫人のヒステリックな罵声が聞えた。

博士はいつもの習慣でビクッと、首を縮めたが、とたんに気がついて、ドンドン床を踏みならしながら、自分の部屋に入って、ピチンと錠を下ろした。

重い鞄を実験台の上で開いて、中から取出したのは小型のラジオのような青色の器械だった。

それには二本の長い線がついていて、端にはクリップがついていた。

その一つで頭髪を、他の一つで靴の先を挟んで置いて、青色の器械のスイッチを押すと、ジジジーッという音がした。

とたんに表戸を激しく打ち叩く妻君の声。

「コラッ丘一。なぜ扉に鍵をかけたッ、早く明けないと……昨日のお処刑を忘れたのかネ、お前さんは。よオし、もう妾ゃ堪忍袋の緒が切れた。鍵ぐらいなアんだッ」

ドーンという荒々しい物音。

妻君は太った身体をドシンドシンと扉にぶつける。錠前がこわれて、扉はポーンと明いた。

「チキショー、お前さん。……」

と、勢いよく飛びこんでみたが、なんたる不思議、そこに居ると思った亭主清家博士の姿が見えない。

博士夫人

「おンや、お前さん、どこへ隠れたのさあ」

ファッショの妻君は、室内に入ると、清家博士の姿が見えないので、愕きかつ憤慨の態である。――しかし室内には、蠅一匹見えやしない。

「窓から飛び出したようにも見えないんだけれど……」

妻君は窓のそばによって、硝子戸を上にあげた。

「ハ、ハッショイ。――」と、そのとき突然大きな嚏の音がした。

「おやおやおや、誰が噂をしたのだろう。妾しはたしか嚏をしないのに、外に誰がしたというのだろう。はてナ……」

妻君の眼がギラギラ光り出した。

そのときであった。妻君の頭髪を上の方へギューッと引張りあげたものがある。

「うわーッ、あいたあいたあいた。で、誰れ?」

すると上の方で、猫が風邪をひいたようなしゃがれ声がした。

「コラ、女よ。わしは猫の神じゃ。お前の亭主は不都合なのじゃから、わしが連れてゆくぞや。オイ、窓のところを見ろ」

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