空襲警報
本文約45,300字 ・ 読了時間 約91分
あらすじ(AIが作成しました)
夏休み中の直江津で、高射砲隊長である義兄からS国による空襲の危険性を聞かされていた旗男は、突如帝都で発生した毒ガス戦禍に遭遇する。市民が防空訓練を通じて防護活動にあたるなか、旗男は流言を広めるスパイを捕らえ、帝都の危機を乗り越える。その後、S国の空襲部隊が壊滅し、敵国の空軍根拠地が反撃を受けたことで、日本本土が防衛されたことを知る。家族の無事と軍の勝利という二つの吉報を受け、旗男は安堵する。
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日本海の夕日
大きな夕日は、きょうも日本海の西の空に落ちかかった。うねりの出て来た海上は、どこもここもキラキラと金色に輝いていた。
「美しいなあ!」
旗男少年は、得意の立泳をつづけながら、夕日に向かって挙手の礼をささげた。こんな入日を見るようになってから、もう三日目、いよいよお天気が定まって本当の真夏になったのだ。
「オイ旗男君。沖を向いて、一体誰に敬礼しているんだい」
後から思いがけない声が旗男に呼びかけた。驚いて後をふりむくと、波の間から頑丈なイガ栗坊主の男の顔が、白い歯をむき出して笑っていた。
「ああ……誰かと思ったら、義兄さん!」
それは義兄の陸軍中尉川村国彦だった。旗男の長姉にあたる露子が嫁いでいるのだった。旗男は、東京の中学の二年生で、夏休を、この直江津の義兄の家でおくるためにきているのだった。
「義兄さんずいぶん家へ帰ってこなかったですね。きょう休暇ですか」
「そうだ。やっとお昼から二十四時間の休暇が出たんだよ。露子がごちそうをこしらえて待っている。迎えかたがた、久しぶりで塩っからい水をなめにきたというわけさ。ハッハッハッ」
「塩っからい水ですって? じゃあ、また海の中で西瓜取をやりましょうか」
「それが困ったことに、来るとき、西瓜を落してしまったんだよ」
「えッ落したッ? ど、どこへ落したんです。割れちゃったの?」
「ハッハッハッ、割れはしなかったがね。ボチャンと音がして、深いところへ……」
「深いところへって? 流れちゃったんですか」
「流れはしないだろう。綱をつけといたからね。ハッハッハッ」
「綱を……ああわかった。なーんだ、井戸の中へ入れたんでしょう……。また義兄さんに一杯くわされたなァ」
「まだくわせはしないよ。さあ、早く帰ってみんなでくおうじゃないか」
二人はくるりと向きを変えると、肩をならべて平泳で海岸の方へ泳ぎだした。
「義兄さん、お天気が定まったせいか、日本海も太平洋と同じように穏かですね」
「ウン、見懸だけは穏かだなァ……」
国彦中尉は、なんとなく奥歯に物の挟まったような言いかたをして、妙に黙った。
「見懸は穏かで、本当は穏かでないんですか。どういうわけですか、義兄さん!」