激動の中を行く
本文約9,400字 ・ 読了時間 約19分
あらすじ(AIが作成しました)
第一次世界大戦後の急激な世界的動揺の中、人道主義や民主主義という新たな思想と、旧態依然とした軍国主義や階級的権威が混在する混乱を綴る。著者は、人類が真の平等と幸福を実現するためには、偶像崇拝や家父長的な家族制度を排し、個人の自覚と自主自律の精神を養うことが不可欠であると論じる。特に日本において長年抑圧されてきた個性の尊貴と人格の自由独立を説き、反動的な保守思想を批判しながら、新しい文明建設への道筋を提唱する。
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人生は静態のものでなくて動態のものであり、それの固定を病的状態とし、それの流動を正統状態として、常に動揺変化の中にあるものであるということは説明の必要もないことですが、戦後の世界は戦前においてさまで優勢でなかった思想が勃興し初めたために、経済的、政治的、社会的のいずれの方面においても、これまでになかった急激な動揺変化を生じて、それがために人間の思想と実際生活とは紛糾に紛糾を重ねようとしています。即ち今日の新しい合言葉となっている人道主義とか、民主主義とか、国際平和主義とかいうものは、戦前において学者、詩人、社会改良論者、宗教家等の空想として、大多数の人類から軽視されていたものですが、今は普魯西のカイゼル父子とそれを繞っていた軍閥者流とが代表として固執していた旧式な浪曼主義に根ざす軍国主義や専制主義がこの度の戦争の末期において頓挫したために、英仏米諸国の一流の学者、政治家、芸術家に由って支持される新しい浪曼主義に根ざした人道主義や民主主義の思想が天下の権威であるが如き外観を呈するに到りました。そうして、今や世界は、この新しい権威である思想に向って俄かに自己の生活を適応させるために照準の大転換を行おうとして焦燥る者と、この思想に反抗して時代遅れの専制的、階級的、官僚的、資本家的の旧思想を維持するために、あらゆる非合理と陰険と暴力とを手段として固執する者と、この急劇な世界の変化に対し、こういう場合に処すべき修養と訓練とをそれまでから欠いていたために、どうすれば好いか、全く策の出ずる所を知らないで徒らに狼狽して右往左往する者と、大体においてこの三種に分つべき人々に由って未曾有の混乱状態を引起しています。