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TORENDIA

大町米子さんのこと

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

十年ほど前、友人の紹介で出会った大町米子という女性の生き様と人柄を綴る。解放運動で病に倒れた夫を支え、愛知県の田舎町で七年以上も教師として生活を支え抜いた苦難の歳月、そして夫の死後に上京し、新たな活動家として成長した彼女の姿を描く。誠実な人柄と勉学への情熱を兼ね備え、明日の日本の建設に献身するその姿勢を高く評価し、立候補における二万五千票という得票結果に、ふさわしい資質を持つ婦人としての称賛を込める。

宮本百合子

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🎧 大町米子さんのこと / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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はじめて大町米子さんにあったのは、いまから十年ばかりまえのことであった。友達から紹介されて、うちへいらした。夏の夜だったとおもう。団扇をつかいながらいろいろ話がでて、大町さんはだんだん自分のくるしい境遇のことや、結婚の問題についてはなした。そういう問題をはなすについても、大町さんの正直さ、人間として一番よく生きてゆこうとしている熱意が感じられ、親愛と信頼とを感じた。大町さんは、けっきょく、もっとも責任のある愛情のえらびかたをして生活条件とすれば困難のより多い故大町氏との結婚を決心したのであった。

結婚した大町さんは、病臥生活の良人について、愛知県の田舎の町の良人の生家へゆきそこで七年以上くらした。解放運動のために健康を失い、経済的基礎もうしなった者が、そういう点で理解のとぼしい田舎町へかえってくらすこころもちには、実にいいあらわされないくるしみがある。まして、その人の妻としての大町米子さんの立場、日々のおもいは察するにあまるものがある。米子さんは、国民学校へつとめて病夫と自分の生活をささえ、大町氏の最後までかわることない真心をかたむけつくした。

大町さんは、御良人の葬儀がおわるとほとんどすぐ上京して来た。そして、「ほんとうに、しばらく……」と力をこめていって、あとは何もいえず、しずかに涙をこぼした大町さんの姿を私が忘れることはあるまいと思う。

あわずにいた何年かのあいだに、大町さんはみちがえるほど立派になった。こまかいさまざまの辛苦が、大町さんの誠実な人柄のうちにうけいれられ、こなされ、選択され、方向をととのえ、明日の日本のよりよい生活の建設のために献身する女性として、十分の厚みと、暖かさと、がんばりとなって来ている。人柄のよさというなかに、大町さんの勉学ぶりがある。これは将来の発展のために、たかく評価されなければならない点だとおもう。民衆の歴史の刻々の推進と、その前衛としてのわれらの党がおうている任務は、きわめて洋々たる前途をもっている。たっぷりした実践力のあることと、理論的発展の可能をもつこと、この二つは、欠くことのできない新しい活動家の資質である。

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