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TORENDIA

砂遊場からの同志

本文約6,800字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

モスクワの冬、仕事帰りの親たちが托児所へ子供を迎えに行き、共に帰宅する風景が日常として存在する。本書は、ソヴェト同盟における托児所や学校教育の様子を詳細に綴る。共同住宅に併設された托児所での生活や、学校における男女共学のあり方、さらには社会主義社会が推進する技術者養成の実態を描く。男女の区別なく自立して働く姿や、子供たちが自治組織の中で成長していく過程を通して、新しい社会の形成を論じる。

宮本百合子

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托児所からはじまる

モスクはクレムリとモスク河とをかこんで環状にひろがった都会だ。

内側の並木道と外側の並木道と二かわの古い菩提樹並木が市街をとりまき、鉱夫の帽子についている照明燈みたいな※[#丸A大文字、122-6]※[#丸B大文字、122-6]と円い標を屋根につけた電車が、冬は真白く氷花に覆われた並木道に青いスパークを散らしながら走る。

夕方、五時というと冬のモスクではもう宵だ。アーク燈が凍った並木道の上にともる。この刻限並木道は勤めがえりの通行人で一杯だ。

鞁鳥打帽の下で外套の襟を深く立て、物がつまりすぎてパチンも満足にかからない書類入鞄を小脇にかかえ、わき目もふらずポケットへ手をつっこんで歩いて行く男や女――これは至極ありふれた文明国の恰好だ。が、ひとつ目につく情景がある。いかにも役所や工場から今退けて来たという風情の男が、又は女が、自分の後へ橇にのっかった小さい子供をひっぱり、何か楽しそうにその子と喋ったり笑ったりしながら、ゆっくり人出の間をやって来る。

それが決して、一組や二組のことじゃあない。並木道がひろくなって、片隅に子供たちの橇遊び場が出来ているようなところへ来かかろうものなら、子供等がおふくろや父親を素通りはさせない。親は押し役だ。子供たちは歓声をあげ、アーク燈と凍った雪の上で仔熊のようにころがりまわる。親たちは、小脇に勤め先からもってかえった書類入鞄をはさみながら、やっぱり同じように陽気な顔つきで立って、お伴をつとめている。――

これこそ、独特なソヴェト同盟風景だ。親子は托児所からの帰りなのだ。

産業別労働組合が共同資本で建てている新しい共同住宅には、きっとその第一階に托児所がある。けれども元からある家のどれにも托児所が附属しているとはきまっていないから、工場へつとめる夫婦は小さい子を工場の托児所へ、役所勤めの男女は区の托児所へ、いずれも朝勤めに出しなに、抱いたり手をひいたりして連れて行く。

八時間働いて退けしなに親たちは托児所へより、それからめいめいの坊やと帰途を充分楽しみながら家へかえってさて夕飯ということになっているのだ。

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