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TORENDIA

声

本文約460字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

深く愛する夫のもとから息苦しさに耐えかねて逃げ帰った若い女が、実家の縁側の柱の割れ目に耳をあて、かつて愛し合った男の声をひそかに聴き続ける宮本百合子の掌編。

宮本百合子

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🎧 声 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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或、若い女が、真心をこめて一人の男を愛した。そして、結婚し、三年経った。けれども、或日その若い女は、

「ああ苦しい、苦しい! 可愛い人。私は貴方が可愛いのよ、だけれども苦しくて、息がつけない」

と、泣き乍ら、男の傍から逃出して仕舞った。

逃げはしたが、女は他に恋した男があったのではない。彼女は、生れた親の家へ戻った。そして、黙って、二粒の涙をこぼし、頭を振り、やがて寂しく微笑んで縁側に坐った。

朝眼を覚すと、一日中、月の出る夜になっても、女は、いつも同じ縁の柱によって居る。

母親は不思議に思い、娘に

「お前、どうしていつも其処に居るの? 内へお入りな」

と云った。

娘は、微笑した。然し、翌日も、その柱からは離れなかった。

柱には、縦に深く一本割れ目がついて居た。女は、きっとその割け目に耳をおしつけて居た。(それを、母親は知らない。)彼女は、そうやって耳をつけ、柱の奥から、嘗て自分の恋をした、今も可愛い男の声を聴いて居たのだ。自分を抱いて名を呼ぶ声、向い合って坐り、朝や夜、種々の物語をした、その懐しい声を聞いて居たのだ。

完

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