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TORENDIA

明日の知性

本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

第二次世界大戦を経て、人間の理性と民主主義の価値が問われる中、亡命先で反ナチス運動を続けたエリカ・マンの活動と、戦火の各地を旅したエヴ・キュリーの記録を考察する。日本の女性たちに対し、歴史の教訓を学び、政治を他者に委ねることの過ちを説く。民主的社会の実現に向け、日本の女性が世界と通じ合える確かな知性と言葉を獲得し、主体的に生きることの重要性を綴る評論である。

宮本百合子

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🎧 明日の知性 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一

第二次ヨーロッパ大戦は、私たち現世紀の人間にさまざまの深刻な教訓をあたえた。そのもっとも根本的な点は国際間の複雑な利害矛盾の調整は、封建的で、また資本主義的な強圧であるナチズムやファシズムでは、できなかったという事実である。もっと進歩した、もっと合理的な方法でなくては――ただ殺戮、侵略、武力では、国際間の問題は解決しないということを血をもって学んだ。

このたびの大戦の結果は、二十五年以前の第一次世界大戦のときよりも、いっそうまざまざと人間理性の勝利の意味、民主的社会の価値を教えたのだが、それにつれて、世界の女性のうごきも、独特の飛躍発展を示してきている。日本はこの十数年間、鎖国の状態で、世界事情は知られなかった。そのために、スペインの民主戦線に有名なパッショナリーアと呼ばれた婦人がいたことも知らなければ、大戦中フランスの大学を卒業した知識階級の婦人たちの団体が、どんなにフランスの自由と解放のためにナチス政権の下で勇敢な地下運動を国際的に展開したかということも知らなかった。耳も掩われ、眼もかくされ、日本の女性は戦争の犠牲とされた。

去年の春ごろ、内山敏氏が、ある雑誌にトーマス・マンの長女のエリカ・マンが、弟のクラウス・マンと共著した「生への逃亡」について、エリカ・マンの活動を紹介しておられた。この短い伝記は、感銘のふかいものであった。知識階級の若い聰明な女性が、そのすこやかな肉体のあらゆる精力と、精神の活力の全幅をかたむけて、兇暴なナチズムに対して人間の理性の明るさをまもり、民主精神をまもったはたらきぶりは、私たち日本の知識階級の女性に、自分たちの生の可能について考えさせる多くのものをもっているとおもう。

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