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TORENDIA

クラリモンド

本文約31,300字 ・ 読了時間 約63分

あらすじ(AIが作成しました)

若き僧侶ロミュアルは、自身の叙任式で出会った絶世の美女クラリモンドに強烈な情熱を抱く。その後、彼は昼は神に仕える聖職者として、夜は貴族として快楽に耽る二重生活を送ることになる。ある夜、死したはずのクラリモンドと再会を果たす夢想のような体験を経て、ロミュアルは彼女の存在が自身の霊魂を揺るがす禁断の蠱惑であることを知る。本作は、信仰と官能の狭間で翻弄される男の破滅的な愛と、その記憶の重さを描く物語である。

テオフィル・ゴーチエ Theophile Gautier

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兄弟、君はわしが恋をした事があるかと云ふのだね、それはある。が、わしの話は、妙な怖しい話で、わしもとつて六十六になるが、今でさへ成る可く、其記憶の灰を掻き廻さないやうにしてゐるのだ。君には、わしは何一つ分隔てをしないが、話が話だけに、わしより経験の浅い人に話しをするのは、実はどうかとも思つてゐる。何しろわしの話の顛末は、余り不思議なので、わしが其事件に現在関係してゐたとは自分ながらわしにも殆ど信じる事が出来ぬ。わしは三年以上、最も不可思議な、そして、最も奇怪な幻惑の犠牲になつてゐたのである。

わしはみじめな田舎の僧侶をしてゐたが、毎夜、夢には――わしはそれが悉く夢ならむ事を祈つてゐるが――最も五慾に染んだ、呪ふ可き生活を、云はゞサルダナパルスの生活を送つてゐた。そして或女をうつかり一目見たばかりに、危くわしの霊魂を地獄に堕す所だつたが、幸にも神の恵と、わしを加護してくれた聖徒の扶けとによつて、遂にわしは、わしに附いてゐた悪魔の手から免れる事が出来た。思へばわしの昼の生活は、長い間、全く性質の異つた夜の生活と、織り交ぜられてゐたのである。昼間は、わしは祈祷と神聖な事物とに忙しい神の僧侶であるが、夜、眼をつぶる刹那からは、忽ち若い貴族になつてしまふ。女と犬と馬とにかけては、眼のない人間になつてしまふ。博奕も打つ、酒も飲む、罵詈をして神を馬鹿にもする。そして、暁方に眼を醒ますと、却つてわしがまだ眠つてゐて、唯、僧侶になつた夢をみてゐるやうな心持がする。此夢遊病者のやうな生活の或場面とか或語とかの回想は、未だにわしの心に残つてゐて、わしはどうしてもそれを、わしの記憶から拭ひ去る事が出来ない。わしは、実際、わしの住居を離れた事のない人間なのだが、人はわしの話すのを聞くと、わしは浮世の歓楽に倦みはてゝ、信心深い、波瀾に富んだ生涯の結末を神に仕へて暮さうと云ふ沙門だと思ふかもしれない。此世紀の生活からさへ絶縁された、森の奥の、陰鬱な僧房に住みふるした学僧だとは思はぬかもしれない。

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