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TORENDIA

病房にたわむ花

本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

春の神経衰弱に悩む語り手は、十年前の入院先で目にした狂院の桜の情景を回想する。庭を遊歩する精神病患者たちの姿や、軍歌を歌いながら桜の花片を身に纏う男、そして窓の奥から響く狂女の騒音と桜の悽愴な彩りを綴る。さらに別の機会に、夜の桜樹立に囲まれた茶室で味わった得体の知れない恐怖体験をも重ね、春の桜がもたらす美観の深層と、それに翻弄される人間の精神の危うさや憂鬱感を、独自の感性で描き出している。

岡本かの子

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🎧 病房にたわむ花 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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春は私がともすれば神経衰弱になる季節であります。何となくいらいらと落付かなかったり、黒くだまり込んで、半日も一日も考えこんだりします。桜が、その上へ、薄明の花の帳をめぐらします。優雅な和やかな、しかし、やはりうち閉された重くるしさを感じます。日本の春の桜は人の眉より上にみな咲きます。そして多くは高々と枝をかざして、そこにもここにもかしこにも人を待ちうけます――時にはあまりうるさく執拗に息づまるようななやましさをして桜は私の春の至るところに待ちうけます。こんな神経衰弱者の強迫観念や憂鬱感は桜にとって唯迷惑でありましょう。しかしそれらは却って私が桜を多くめでるのあまり桜の美観が私の深処に徹し過ぎての反動かもしれません。かりに桜のない春の国を私は想像して見ます、いかに単調でありましょう。あまり単調で気が狂おう()そして日本の桜花の層が、程よく、ほどほどにあしらう春のなま温い風手は、徒に人の面にうちつけに触り淫れよう。桜よ、咲け咲け、うるさいまでに咲き満てよ。咲き枝垂よかし。

だが、まだ私は、桜花に就いての憂鬱感や強迫観念を語りやめようとするのではありません。

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