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TORENDIA

かげろうの日記

本文約30,800字 ・ 読了時間 約62分

あらすじ(AIが作成しました)

作者は柏木という男性から文を受け取り、二人は親密な仲となる。しかし、父の赴任や、男性の他の女性との関係を疑う出来事が重なり、次第にすれ違うようになる。物語は、夫婦関係に似た男女の情愛と、不信感に苦しみながらも夫の訪問を待つ女性の葛藤を描く。自らの心境を日記に綴り、夢や出来事を記録することで、当時の世相や切ない心の内を表現する。

堀辰雄

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なほ物はかなきを思へば、あるかなきかの心地する

かげろふの日記といふべし。

蜻蛉日記

その一

半生も既に過ぎてしまって、もはやこの世に何んのなす事もなく生きながらえている自分だが、――一たい顔かたちだって人並でないし、これと云った才能もあるわけではないのだから、こんな風にはかない暮しをしているのも尤もの事だとは思うものの、只こうやってぼんやりと明し暮しているがままに、世の中に多い物語などをおりおり取り上げて、その端などを読んで見ると、ずいぶん有り触れた空言さえ書いてあるようだから、自分の並々ならぬ身の上を日記につけて見たら、そんなものよりも反って珍らしがってくれる人もあるかも知れない。それにまた、世間の人々が、私のようにこんなに不為合せになったのは、あまりにも女として思い上っていたためであろうかどうか、その例にもするが好いと思うのだ。

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