TORENDIA
「馬車」
堀辰雄
TORENDIA
「馬車」
本文約430字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
半陰影の中で人か怪物か分からぬ争いが繰り広げられ、結末で光が差し込む横光利一の「馬車」を、レンブラントになぞらえて「光の傑作」と讃える堀辰雄の評論。
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🎧 「馬車」 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星
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「馬車」は横光利一さんのもつとも特異な作品の一つである。横光さんの作品の基底には、いつも humain なものと surhumain なものとがふしぎに交錯してゐるが、それがどちらがどちらだか分らないくらゐな點にまで達するとき、その作品は大概成功してゐる。ことに「馬車」においてはその效果がいちじるしい。物語は、先づ、半陰影のうちに展開する。その無意味なやうな薄暗がりのなかに何者かがくんづほぐれつして爭つてゐる。それは人間であらうか、それとも怪物であらうか? また見知らぬ植物かとも見える。読者はただ息をつめてゐる。が、物語が結末に近づくにつれて、どこからともなく聖らかな光が射し込んでくる。そしてその光は、結末になるや、突然まぶしいくらゐに輝きだし、諸人物の上をくまなく照らし、そして私達にはその光はずつと向うの、物語のうすぐらい冒頭にまで達してゐるかのやうに思はれてくる。私は、人々がレンブラントを光の畫家と云ふごとき意味にて、この「馬車」一篇を光の傑作であると云ひたい。
完