TORENDIA
まんりやう
薄田泣菫
TORENDIA
まんりやう
本文約410字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
寒い冬を越してもまだ落ちずに揺れている万両の赤い実を見つめ、その謙遜なささやかな生命のありように心を寄せる薄田泣菫の随筆。
速度
🎧 まんりやう / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏
💰 この本を応援する(投げ銭)
1 / 1
夕方ふと見ると、植込の湿つぼい木かげで、真赤なまんりやうの実が、かすかに揺れてゐる。寒い冬を越し、年を越しても、まだ落ちないでゐるのだ。
小鳥の眼のやうな、つぶらな赤い実が揺れ、厚ぼつたい葉が揺れ、茎が揺れ、そしてまた私の心が微かに揺れてゐる……
謙遜な小さきまんりやうの実よ。お前が夢にもこの夕ぐれ時の天鵞絨のやうに静かな、その手触りのつめたさをかき乱さうなどと、大それた望みをもつものでないことは判つてゐる。いや、お前の立つてゐるその木かげの湿つぽい空気を、自分のものにしようとも思ふものでないことは、よく私が知つてゐる。
お前はただ実の赤さをよろこび、実の重みを楽しんでゐるに過ぎない。お前は夕ぐれ時の木蔭に、小さな紅提灯をともして、一人でおもしろがつてゐる子供なのだ。
持つて生れたいささかの生命をいたはり、その日その日を寂しく遊んで来たまんりやうよ。
またしても風もないのに、お前の小さな紅提灯が揺れ、そしてまた私の心が揺れる。
完
薄田泣菫の他の作品
同じジャンルの朗読つきの本
TORENDIA
みちのく
岡本かの子
みちのく
岡本かの子 ・ 約14分
TORENDIA
賭博の負債
田中貢太郎
賭博の負債
田中貢太郎 ・ 約6分
TORENDIA
春の心臓
ウィリアム・バトラー・イエーツ William Butler Yeats
春の心臓
ウィリアム・バトラー・イエーツ William Butler Yeats ・ 約13分
TORENDIA
樂しい手術
中谷宇吉郎
樂しい手術
中谷宇吉郎 ・ 約3分
TORENDIA
侠客の種類
幸田露伴
侠客の種類
幸田露伴 ・ 約14分
TORENDIA
寝る前の三つの
点検 ― 冬の
暖房と火の用心
、逃げ遅れを防
霧島 蒼
寝る前の三つの点検 ― 冬の暖房と火の用心、逃げ遅れを防ぐ家の備え
霧島 蒼 ・ 約26分
TORENDIA
「我等の劇場」
緒言
岸田國士
「我等の劇場」緒言
岸田國士 ・ 約4分
TORENDIA
我輩の智識吸収
法
大隈重信
我輩の智識吸収法
大隈重信 ・ 約7分