本文へ移動
TORENDIA

阿英

本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

廬陵の青年・甘玉は、負傷した美女・阿英を助け、弟の妻として迎える。阿英は献身的に家族に尽くすが、正体はかつて甘家で飼われていた鸚鵡であった。阿英は分身の術を使うなど不思議な力で家族を災難から守り、甘玉が窮地に陥った際には恩義ある秦氏と共に危機を救う。しかし人間との共生が叶わず、阿英は不慮の事態を機に、一家へ別れを告げて再び空へと飛び去っていく。

蒲松齢

速度
🎧 阿英 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 8

甘玉は幼な名を璧人といっていた。廬陵の人であった。両親が早く亡くなったので、五歳になる弟の、幼な名を双璧というのを養うことになったが、生れつき友愛の情に厚いので、自分の子供のようにして世話をした。そしてがだんだん大きくなったところで、容貌が人にすぐれているうえに、慧で文章が上手であったから、玉はますますそれを可愛がった。そしていつもいった。

「弟は人にすぐれているから、良い細君がなくてはいけない。」

そして選択をしすぎるので、婚約がどうしても成立しなかった。その時玉は匡山の寺へいって勉強していた。ある夜初更のころ、枕に就いたところで、窓の外で女の声がした。そっと起きて覘いてみると、三、四人の女郎が地べたへ敷物を敷いて坐り、やはり三、四人の婢がその前に酒と肴をならべていた。女は皆すぐれて美しい容色をしていた。一人の女がいった。

「秦さん、秦さん、阿英さんはなぜ来ないの。」

下の方に坐っていた者がいった。

「昨日、凾谷から来たのですが、悪者に右の臂を傷つけられたものですから、一緒に来られなかったのよ。ほんとに残念よ。」

一人の女がいった。

「私、昨夜夢を見たのですが、今に動悸がするのよ。」

下の方に坐っていた者が手を揺っていった。

「およしなさいよ、およしなさいよ。今晩皆で面白く遊んでるじゃありませんか。おっかながるからだめだわ。」

女は笑っていった。

「お前さん怯だよ。何も虎や狼がくわえていくのじゃあるまいし。もしお前さんが、それをいわないようにしてもらいたいなら、一曲お歌いなさいよ。」

女はそこで低い声で朗吟[#ルビの「ろうざん」はママ]した。

間階桃花取次に開く

昨日踏青小約未だ応に乖らざるべし

嘱付す東隣の女伴

少く待ちて相催すなかれ

鳳頭鞋子を着け得て即ち当に来るべし

朗吟が終った。一座の者で賞めない者はなかった。一座はやがて笑い話になった。不意に大きな男があらわれて来た。それは恐ろしい顔の鶻のように眼のぎらぎらと光る男であった。女達は口ぐちにいった。

「妖怪だ。」

蒲松齢の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本