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TORENDIA

日本美

本文約5,600字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の民俗と伝統的な感性に基づき、神を迎えるための依り代としての花の役割やその歴史的背景を論じる。月見の芒や祭りの標山、婚礼の島台といった事例を挙げ、日本古来の信仰における神を誘う儀礼的・宗教的な花の意味を解く。さらに、俳句に見られる簡素で純粋な小世界を構築する精神に触れ、それらが現代の花道においても重要であると説き、日本人の生活の中に息づく独自の美意識の標準をいかに継承すべきかという指針を提示する。

折口信夫

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🎧 日本美 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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私は日本の民俗の上からお話を申し上げたいと思つてゐます。譬へば、貴女方が花をお活けになる、さうした我々に芸術的感銘をお与へにならうとする花よりも、もつとうぶな花、宗教的な花の話をしてみたいと思ひます。

八月の月見、日本では月見が存外新しいことのやうに思つていらつしやるかも知れませんが、世の中の習慣は印象の深いものだから、月見が来ると花をお供へになるでせう。何故月見に花を供へるか。この花と立花・生花と、何か関係があるのではないかとお思ひになつたことはありませんか。

そして月見の行事の心の底には、昔から伝つてゐるお月様を神様と感じる心が残つてゐる。さういふ風に昔の人が、月夜見命などゝいふ神典の上の神の感じとは別に、月の神を感じて居り、その月の神に花をさしあげるのが、月見といふのです。月見はお月さんのまつりのことです。その花をどうするかといひますと、あれは今日西洋式の宴会を開きますと、色々な花を飾る。さういふ風に、日本でも昔から花を飾つてゐます。その証拠には婚礼の時、以前には何処でも行つたことですが、今は特に古風な婚礼の場合にしか見かけなくなりました。座敷に島台を飾つておきます。高砂の尉と姥の飾りつけをした、この島台は何かと申しますとこれが宴会の花と同じことなのです。島台のことを古くは洲浜と言つてゐます。水の流れてよつてゐる洲のことで、島台の形に何かうね/\した波の寄る砂浜の様子が見えてゐるからかう言ふのでせう。京都の古風なお菓子に「洲浜」といふのがあることは御存じでせう。さういふ川の砂浜の様子をかたどつた台の上に、色々なものを飾つたものです。人形を飾ることも、植物を飾ることもあります。さういふ動物・植物をのせて宴会の席に飾る訣で、江戸時代の中頃までは、正式な宴会の絵を見ると、屋敷の中心に洲浜が飾つてありますし、又、舟遊山の時にも洲浜の据ゑてあるのが描いてあります。普通は草の花木の枝を飾り、場合によると人形を飾ります。

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