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TORENDIA

あとがき〔『いづこへ』〕

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

外套と青空や白痴以後の短編を、自伝的作品、現代小説、歴史小説の三部構成で収める。執筆能力の許す限り様々な雑誌へ雑然と発表してきた作品群をまとめ、その系列を整理する。作者自身の行先や正体は不明なままであり、執筆によって自己を見出そうともがく姿を綴る。書くことによってさまよい続ける作家の軌跡と、その作品がいかにして生まれたのかを論じる、全集のあとがきである。

坂口安吾

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🎧 あとがき〔『いづこへ』〕 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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私の終戦後の作品のうち「外套と青空」「白痴」以後の今日までの短篇の大部分をまとめたものです。

目次を三つに区切つたのは、最初のが私の自伝的意味をもつ作品、その次が私小説ならざる現代小説、最後が歴史小説です。

私は雑誌の選り好みといふものを余りやらず、私の執筆能力の限度に応じて、頼まれる雑誌へ引受けた順番に書いて行き、能力の限度以上はことはる、だから大衆雑誌、婦人雑誌のやうなものを引受けた後で、純文学雑誌や綜合雑誌をことはらねばならぬ羽目になる場合が多く、終戦後の私の作品を発表した雑誌といふものは雑然たるもので、娯楽雑誌にまで小説を書きました。然し、書いた小説は娯楽雑誌だからどうといふのでなく、どの雑誌へのせてもよかつたのだ。私自身は、たゞ、書けばよいのだから。

けれども読者は迷ふに相違なく、大衆雑誌に書いたものは大衆小説だと思つて読んでくれないけれども、変に間の悪いもので、私の方はたゞ順番に書いて発表して行つて、娯楽雑誌や、黙殺される雑誌に、却つて自信のある作品がのるやうな巡り合せになることが多かつた。その作品にも多少は系列みたいなものがあるのだから、こゝに一冊にまとめる喜びは特別でした。

「いづこへ」といふ題の小説は他の作家にも数種あつて、まぎらはしいといふ話でしたが、現在の私自身、いづこへ行くのやら、わが行先が分らない。曠野を歩いてゐるだけ。だから「いづこへ」といふ題名は一つの小説の題名ではなく、私は執着した。「いづこへ」といふ小説を特に自負してゐる意味ではありません。私は先程もペンを投げだして、どこへ行くのやら、ふと、思はずにゐられなかつた。

私自身が何者であるかは私には分つてゐない。たゞ、私は書くことによつて、私を見出す以外に仕方がない。私は原稿紙に向ふと、いつも、もどかしいだけで、そして、何がもどかしいのだか、それすらも、分つてゐない。

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