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TORENDIA

白髪鬼

本文約18,800字 ・ 読了時間 約38分

あらすじ(AIが作成しました)

麹町の素人下宿に住む学生の須田は、同居する男・山岸から、試験場に現れる白い髪の女の幽霊に悩まされていると打ち明けられる。ある日、山岸に好意を寄せていた下宿の娘・伊佐子が突如変死し、その髪は死後白く変色していた。山岸の周囲では試験場での不可解な幻影や、帰郷直前の怪異が次々と起こる。須田は伊佐子の髪が、山岸の目には生前から白く映っていたという証言を耳にし、その謎の正体に戦慄する。

岡本綺堂

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一

S弁護士は語る。

私はあまり怪談などというものに興味をもたない人間で、他人からそんな話を聴こうともせず、自分から好んで話そうともしないのですが、若いときにたった一度、こんな事件に出逢ったことがあって、その謎だけはまだ本当に解けないのです。

今から十五年ほど前に、わたしは麹町の半蔵門に近いところに下宿生活をして、神田のある法律学校に通っていたことがあります。下宿屋といっても、素人家に手入れをして七間ほどの客間を造ったのですから、満員となったところで七人以上の客を収容することは出来ない。いわば一種の素人下宿のような家で、主婦は五十をすこし越えたらしい上品な人でした。ほかに廿八九の娘と女中ひとり、この三人で客の世話をしているのですが、だんだん聞いてみると、ここの家には相当の財産があって、長男は京都の大学にはいっている。その長男が卒業して帰って来るまで、ただ遊んでいるのもつまらなく、また寂しくもあるというようなわけで、道楽半分にこんな商売を始めたのだそうです。したがって普通の下宿屋とはちがって、万事がいかにも親切で、いわゆる家族的待遇をしてくれるので、止宿人はみな喜んでいました。

そういうわけで、私たちは家の主婦を奥さんと呼んでいました。下宿屋のおかみさんを奥さんと呼ぶのは少し変ですが、前にも言う通り、まったく上品で温和な婦人で、どうもおかみさんとは呼びにくいように感じられるので、どの人もみな申合せたように奥さんと呼び、その娘を伊佐子さんと呼んでいました。家の苗字は――仮りに堀川といって置きましょう。

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