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TORENDIA

シャボン玉

本文約5,800字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

トルコの町々を巡る手品師ハボンスは、病で我が子を失い絶望する。山奥で出会った魔法使いから、吹き込んだ願いが実体化するシャボン玉の術を授かった彼は、都の広場で子供の姿を映し出す芸を披露して人々を魅了する。やがて無患子の実が尽きれば自身も消える運命を受け入れた彼は、王や大勢の市民が見守る中で、最後の芸として子供の姿を空へ送り出し、人々の前から忽然と姿を消す。

豊島与志雄

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🎧 シャボン玉 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一  むかし、トルコに、ハボンスといふ手品師がゐました。三角の帽子をかぶり、赤や青の着物を着、一人の子供をつれて、田舎の町々を廻り歩きました。そして町の広場にむしろをひろげて、いろんな手品をして見せました。しやちほこ立や、棒上りや、金輪の使ひ分けや、をかしな踊りなどを、太鼓をたゝきながらやるのです。

けれども、さういふ広場の手品師の生活は楽ではありませんでした。見物人がはふつてくれる金はごくわづかなものでしたし、その上、天気のよい日にしか出来ないのです。雨が降つたり雪が降つたりする時には、宿屋の中にぼんやりしてゐなければなりません。

或る年の冬、毎日毎日冷い雨が降りつゞきました。ハボンスと子供とは、山奥の小さな町に行つてゐましたが、広場に出て手品を使ふことも出来ず、きたない宿屋の室にとぢこもつてゐました。そして、早く天気になつて、美しい金輪を使ひ分けたり、思ふさま踊り狂つたりして、広場にあつまつてる人たちを喜ばしてやりたいものだと、そればかりを待つてゐました。けれども、なか/\天気になる模様がないばかりでなく、ちよつとした風邪の心地でゐた子供が、だん/\苦しみだしてきました。

ハボンスは心配で心配でたまりませんでした。可愛い子供に死なれでもしたら、自分は世の中に一人ぽつちになつてしまつて、何の楽しみもなくなるのです。で、夜も昼もつきつきりで子供の看病をしました。けれども、子供の病気はひどくなるばかりです。町で一ばんよい医者にもかけてみましたが、何の甲斐もありません。四五日の後に、たうとう死んでしまひました。

ハボンスはひどく泣き悲しみました。一度に十も二十も年をとつて老いぼれたやうになりました。そしてもう自分はどうなつても構はないといふ気で、金輪や棒や太鼓など手品の道具も売り払ひ、持つてた金もみな出してしまつて、出来るだけ立派な葬式をしてやりました。

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